>> それは、世界の悪意を知らぬ幼子たちの

「ねぇエレフ、今日のご飯は何だと思う?」
「えっ?」

 レイシの突然の言葉に、驚いているらしいエレフ。
 レイシは振り返ってくすくすと笑った。

「当てっこしよ! 外れた方が当てた方の宿題もするってどう?」
「え、でも……」
「ねぇねぇ、エレフは何だと思う?」

 有無を言わさない瞳。同じ紫水晶。
 エレフは少し迷った後、ゆっくりと口を開いた。

「んと……ハンバーグ」
「えーっ」

 レイシは嫌そうに言う。
 エレフしか知らないが、ハンバーグは実はレイシの嫌いな物であった。
 レイシは両親の前でも背伸びをする様な子だから、嫌いな物も文句1つ言わず食べたが。

「俺はカレーライスだと思うなー」

 2人は走り出す。……正確にはエレフがレイシの手に引かれている形だったが。
 待ってよ、と言うエレフの言葉にも耳を貸さず、レイシは手を握ったままではあるが随分早く走っていた。



「父さん、母さん、ただいま!」

 レイシが勢いよく扉を開ける。
 するとそこには、見知らぬ男性が居た。
 山奥の家であるから滅多に人は来ないのに、彼は何なんだろう?
 きょとんと首を傾げるレイシとは正反対に、エレフは自分の本能が告げる『キケン』を悟った。

「レイシ! 逃げよう!」
「え? でも……」
「ほほぅ……」

 エレフは見た。男の視線が、品定めをする様にレイシの身体を這ったのを。
 その視線の気持ち悪い事……纏わり付く様なねっとりとした視線。
 エレフはその赤い髪を、しっかりと瞼に焼き付けた。

「捕らえろ!」

 赤い男はまるで蠍に見えた。
 この幸せな生活を崩されるという事も知らず、レイシはただエレフに手を引かれ走る。
 さっきとは逆だ――ただ、レイシが気付いたのはたったそれだけの事で。
 2人が疲れると共に逃げてきた母が抱き上げ、あぁ父さんはどうしたんだろう、とレイシはぼんやりと思った。










10-8/11



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