>> 幸せに、おなりなさい

「え――何――」
「レイシ!」

 いきなり扉が開いたのには心底驚いた。
 勿論カッサンドラさんとメリッサさんから此処の話は聞いていたから、何が起こってもおかしくないとは考えていたけれど。
 嗚呼……あれから何年経っただろう……
 彼の姿は想像のそれより幾分か成長していたけれど、分かった。

「エレフ!」

 一瞬、周りの音が全て聞こえなくなる。
 走り出したら後は早かった。
 吸い込まれるようにエレフの腕の中へ、強く強く抱き合って。

「エレフ……エレフ、よかった! 会えなかったら……どうしようかと……」
「大丈夫……約束したから、レイシ」

 必ず迎えに来るって。
 俺よりも少しだけ背が高くなっているエレフを見上げると、笑った。
 安心して、やっぱり俺にはエレフ以外要らないなんて思うけれど、エレフの背後に居た子がエレフをつつくのを見る。

「あの……感動的な再会の途中、悪いんだけどさ……」
「――あぁ、知ってる」
「?」

 ――逃げなきゃ。
 エレフの耳打ちに、あぁそうかと哀しくも納得する。
 ――ごめんなさい、カッサンドラさん、メリッサさん。
 振り返って直接謝る事はできなかったけれど、俺は心の中でそう言った。

「ミッシュ……いいえ、レイシ」

 エレフに手を引かれ、走り出そうとする俺の耳に、声が届く。

「兄弟を大切にしなさいね。幸せになりなさい」
「……!」

 ――ありがとう、メリッサさん。
 流れる涙を押さえながら、エレフと一緒に居た子の先導で俺は走る。

 ごめんなさい――
 いえ、ありがとう――
 絶対に、忘れないから。


















10-9/20
(もう二度と、その手を離さないで)
(例え何が襲おうとも……)



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