鍵盤の上で踊る


 そうか、生涯を共に過ごせるのなら、それはとても幸せなことだろうな。






「……終わりか」
「……うん」

 ああ、そう。これで全て終わり。
 祭りは終わり、短かった彼らを繋ぐ扉も閉じる。
 もう少しで本当に、全て終わる。

「長かった」

 魔王サマエルは空を仰ぐ。

「長くない」
「お前にとっては、そうかもな」
「長くないよ、全然。足りない」

 いくら盲目だからといっても、こう声が震えてしまえば、俺の感情は丸見えだろう。
 袖で涙を強く拭う。

「――足りないよ」

 短かった。
 多分、半年くらいだ、もしくはそれ以下。
 出会って1ヶ月、でもそれからまた会えなくて、

「何でもう終わりなの? 短すぎる、人間の一生にも、ぜんぜん足りない」
「……人間は強欲すぎる」
「魔王に言われたくない」

 刻一刻と迫るタイムリミット。まだ陽は高い。
 ああ、終わってしまう、終わってしまう。
 この愛しい時が。

「……どうしたらいいだろう」

 それでも、サマエル。
 愛しくて愛しくてたまらなくて、悪意なんか持てなかった筈なのに。
 よく俺だと気づいてくれたな。

「お前は、どうしたい?」
「……?」

 布を一枚隔てて、向こう側。
 彼が光を見ていた頃のことを、俺は知らない。

「……俺は」

 そうだ、俺は。

「俺は……一緒に、居たい。サマエルと」

 声が震える。涙が頬を伝う。
 タイムリミットが、漸く俺を素直にさせる。

「一緒に居たい。……連れて行ってください」

 エクソシストの台詞じゃない。先輩はきっと怒るだろう。
 でも、それでもよかった。俺はこの人と一緒に生きたい。
 この人が居ない世界に、俺が生きる意味はない。

「……エクソシストが」
「エクソシストなんて、やめてもいい。サマエルのためなら」
「お前、俺に会う前どうやって生きてたんだ」
「わからない」

 忘れてしまった。
 この世界に触れて、俺は、生き方を忘れてしまった。

「でも、お願い。連れて行って」

 サマエルは俺を引き寄せる、何か言う前に、彼はその翼を広げた。

「え……?」
「……お前が望んだんだろ」
「でも、」

 ――まさか、本当に。

「冗談だと言うなら今の内だぞ」

 サマエルはいつもの調子で言う。
 俺は何も言えないでいる――が、返事の代わりに、手を強く握り返した。

「いいんだな」
「……はい」



 時計は、間もなく15時を指す。








12-11/19
title by 無彩色症候群。
サマエル様最愛です
俺得ですみません愛してますサマエル様あああああ離れたくない\^o^/




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