決意を新たに

 それからそれ程長い時間が経たない内に、神さまたちは俺の前に現れた。

「レイシ! 大丈夫だったか!?」
「……皆」

 問われた言葉に答えられず、俺はただ言葉を返す。

「レイシ、怪我は?」
「ああ、俺は大丈夫――」

 ただグリムローパーは何かしらの傷を負っているんだろうな、と。
 思った時点で、俺はもう割と毒されている。

「……何か悪いことでも言われたの?」

 釈然としない俺の返しに、アルテミスは恐る恐る問う。

「……皆は、知ってたか? ここの神さまの解放には、時間制限があるってこと」
「そうなんですか?」
「ああ。しかも、そのタイムリミットは明日らしい」
「明日!?」

 明日の何時までなのかは分からない。ただ、それ程時間が残されていないだろうことは分かる。
 今こうしている間にも進まなければ、とは思う。しかし、明確ではないゴールに二の足を踏んでいる。

「なら、早く行かないと!」
「多分、ここからだったら大分遠いよな……? しかも、どうしたら解放できるのかが分からない」
「しっかりしてください」

 トトが俺の目を真っすぐ見て言う。

「レイシさん、あなたは今まで、沢山の神さまを解放してくれたじゃないですか。それらは全て、あなた自身の意思でなかったことは、私は知っています。今度こそ、あなた自身の意思で解放する時が来たんです。今までのお礼ではないですが……私たちも、協力しますよ。ゴールが見えなくたって、必ずたどり着けます。ここから足を踏み出せば」
「トト……」
「それに」

 トトはパピルスをめくる。

「こういった期間限定の場所では、まず1000歩歩くことで、1人めの神さまが解放できます。2人めは、1000歩歩いた後のエリアで出会う魔神から解放石を手に入れられます。3人めは、敵を倒すことによって解放石が手に入るみたいですね」
「……分かってるんじゃないか……」
「1人めは、正確にはボス魔神を倒す、だけどね。ここのボス魔神はグリムローパーみたいだけど、レイシ、平気?」
「うっ」

 クリシュナが口を挟んでくる。ぐぬ、またあいつと会わなきゃいけないのか。しかも勝たなきゃ解放できない。
 しかし俺が捜している人は、その内のどれか分からないのだ。とりあえず進むしかない。

「……とりあえず、ありがとうトト。これで俺にも進む目的ができた」
「いえ」

 まずは、先程さらわれた辺りの道まで戻ればいいのだろうか。
 1000歩って多分、そんなにないと思うけど、あの道を抜けたらって意味なんだと思う。
 俺はアルテミスを見る。

「アルテミス、前さ、神さまが疲れるのは気持ち的な問題って言ってたよな」
「あ、うん。エジプト砂漠だったっけ」
「そうそう。……だから今日はさ、俺が疲れるまで付き合ってもらっていいか?」

 明日には解放できなくなる。それだけはどうしても避けたい。
 今日、行ける所まで行く。折角だし身体を酷使してやる……!

「ああ、勿論だ。私は今まで、お前に何度も助けられてきたからな。それくらい安い」
「ありがとう、ヴァルキリー」
「私たちも助けになれればいいが」

 俺は自力で立ち上がる。そうだ、俺は行かなきゃならない。
 まだ見ぬこの神具の持ち主を探し出し、謝るために……!

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