かぼちゃの前座

 俺はケルト峡湾までの神さまを引き連れ、ハロウィンカーニバルに参加することになった。

「いや、参加というか……」

 ここにも魔神は居て、魔神を倒すことで、2人の神さまが解放できるらしい。
 ハロウィンだけあって、道にも装飾が施されている。どこかおどろおどろしい。

「レイシさん、平気ですか?」
「何が?」
「ここに捜し人が居るかもしれないんですよね?」

 俺は口をつぐんだ。――そうなのだ。
 今まで旅してきた中で、特に何か思った場所は無かったのに、ここだけは違う。
 捜し人が居る――何だか、懐かしい感じがするのだ。

「でも、ハロウィンで懐かしい感覚っていうのも、変だよな。どういうことだろ」
「ハロウィン?」
「ハロウィンっていうと、オイフェとか?」
「オイフェとマクリルか?」
「……皆知り合いなのかよ……」

 そうか、でも確かにこの会場はケルト峡湾の近くにあるから、ケルトの神とは仲が良いのかもしれない。

「もしかすると、レイシさんの捜し人はケルト神かもしれませんね」
「ケルト? あぁそうか、その可能性があるよな……」
「でも俺たちじゃなかったんだろ?」
「オイフェとか、マナナン・マクリルだって居るじゃん」

 2人とはいたずら仲間なんだよね、とアポロンが付け足す。

「レイシさん、聞き覚えはありますか?」
「さあ……名前聞いて思い出せるなら、苦労しないけどな」
「……そうですよね……」
「まあ、解放できたら思い出すこともあるかもしれないな、皆頼む」
「勿論だ」

 ヴァルキリーがまず、すいと先頭に立つ。

「どうした?」
「……来る」
「え?」

 空気を切り裂くような音がして、ヴァルキリーの目の前に、フードを被った奴が現れた。
 鎌を持っている――その風貌は、まるで死に神。

「グリムローパー!」

 魔神だろうか。まあただの敵には見えない。
 グリムローパーと呼ばれたその魔神は、低い声で笑う。

『随分と解放したものだな……』
「ぐっ……」

 その声は、耳障りだ。俺は頭を押さえてうずくまる。

『おや、記憶があるのか。完全に消してしまったつもりだったが』
「お前……誰だ……俺を、知ってる、のか……?」
『思い出せなくて苦しんでいるのか……それはそれで面白い、な』

 グリムローパーが鎌を閃かせる。
 俺の傍にはスサノオノミコトがやってきて、他の神さまは、グリムローパーに跳びかかっていった。

『多勢に無勢か……ここは引かせてもらうよ』

 ククッと喉の奥で笑うような声が聞こえて、グリムローパーが姿を消す。
 それだけで大分身体が楽になった。

「大丈夫か、レイシ……?」
「あぁ……でも、これで1つ分かった」

 俺は何とか立ち上がる。

「やっぱりここは、俺に関係がある」

 グリムローパーは何か知っているようだった。
 奴から聞くのは何とも癪だが、関係あることを知れただけでよかった。

「進もう、立ち止まっていられない」

 漸く見つけた手がかりなのだ、もう、逃がさない。

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