予感

 解放された神さまはクリシュナ、インドラ、ガネーシャで、俺の捜し人はいなかった。
 代わりに、予想通り象がいた。

「うお、象! なあ、触ってもいい?」
「そっち本体だからだめ」
「え……?」

 大体レイシさんは神さまに触れないじゃないですか、とトトに言われ、確かに、となる。

「俺が触れないんじゃないけどな」
「本当に越えられない壁みたいな感じなので、無理だと思いますけどね」
「……試してもいい? トト」
「私でですか!?」

 絶対つらいのでお断りします、とけんもほろろに断られた。

「あーあ、旅が長すぎる……早く会えたらいいのに……」
「そう気を落とさないでください、レイシさん。もしかしたら次の場所にいらっしゃるかもしれませんし……ナビィもついてますよ!」
「前者も後者も慰めにならない」

 次の場所に、と今まで何度思っただろうか。その度に裏切られた気分を味わうことになる。
 どこに居るんだろうか、俺の捜し人。
 あと正直、ナビィの相手は疲れる。

「ボクでよければ話を聞くよ?」
「クリシュナ……」
「蛇が苦手なら、退治するし」
「……」

 クリシュナの一見思いやりに溢れた申し出は、俺には逆効果だった。もうこの件は話し疲れた。

「悪いな、今は話す気になれなくて……もう皆知ってるから、知りたいんだったら聞いてくれ。さー次行くぞ」
「レイシ、大丈夫なのか?」

 ヴァルキリーが心配そうに声を掛けてくる。
 大丈夫か、と言われれば、大丈夫と答えるより他にない、一刻でも早く、俺は前に進みたい。

「疲れてないわけじゃないが……進めるから、大丈夫。ここにいつまでも留まっていたって仕方ないし」
「次は寒い場所ですが、平気ですか?」
「寒い場所?」
「雪の森という所です」

 うわっ、寒そう……聞くだけで寒い。悪寒が。

「きっと次の場所にも捜し人居ないだろうな……」
「何でそんな決めつけるの? 居るかもしれないじゃん」
「だって俺寒いの苦手だもん」

 寒いの苦手な俺が、寒い場所にいつまでも留まっていられる筈がない。







全力疾走!

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