解放の代償

 階段を上った先には、8つの頭を持つ蛇、ヤマタノオロチが待ち構えていた。

「行くぞっ!」

 ジークフリートの掛け声と同時に、神さまたちがとびかかっていく。
 1、2、3、4……もう、数えるのにも飽きてしまった。

「今の内に2人を解放しようか、ナビィ」
「はい!」

 ナビィに渡された2種の解放石、俺はそれを手に、同時に2人を解放する。
 解放する時に疲れると言ったのは嘘ではない、何だか力を奪われているような気がするのだ。

「……こりゃまた、随分取られたな」
「レイシさん!? 大丈夫ですか!?」

 まるで貧血だ。なったことないけど。
 若干ふらついて地面に座り込むと、戦っていた筈の神さまたちが戻ってきた。

「レイシ!?」
「……魔神は?」
「倒したぞ、ほら」
「……おっけー」

 ジークフリートから最後の1つを受け取り、ナビィの方に手を差し出す。
 だがナビィは、何故か解放石を渡そうとしない。

「……何だよ、ナビィ。早く渡せよ」
「だって今、レイシさんは疲れてるじゃないですか。解放できるんですか?」
「できるできないの問題じゃなくて、するんだよ」
「……話し中悪いわね。あなたが私たちを解放してくれたの?」
「……?」

 声が降ってきて、見上げると、そこにはさっき解放した2人の神さまが立っていた。

「ああ、うん、そう。俺、レイシ。よろしく」
「私はコノハナサクヤヒメよ」
「俺はスサノオノミコトだ」
「……すごいな」

 神さまに囲まれるなんて経験、なかなかできない。貴重だ。
 俺は立ち上がり、ナビィから解放石を要求する。

「大丈夫だから。……俺たちは、解放しなきゃなんないだろ?」
「……でも」
「この解放石の神さまが、もしかしたら俺の捜してる神さまかもしれないし」

 コノハナサクヤヒメが微妙な顔をした。

「……分かりました」

 俺はナビィから解放石を受け取り、片手に載せた。
 ――やっぱり、1人だったら平気だ。さっきは多分、一気に2人を解放したからだな。

「ヤマトタケル!」
「遅かったじゃないか」
「よかったわね、無事で」
「すごく窮屈だったけどね」

 君が僕を助けてくれたのかい、とナルシスト気味な笑顔で微笑まれる。俺は若干引く。

「ありがとう。名前は?」
「レイシ……」
「レイシか。僕は君の捜してる人だった?」
「残念ながら違うみたいだな……俺の捜してる人、多分、俺のこと知ってるから」
「どういうことだい?」

 その件を説明するのは大変面倒だったが、他に説明してくれる人も居なさそうだったし、纏めて説明することにした。

「そうか。君は記憶を取り戻そうとしてるんだね」
「だから、早く進まなきゃならない」
「たまには、少し休んだらどうだい?」
「えっ」
「ここまで上ってくるのは疲れたでしょう? この先に休める場所があるから、休んでいくといいわ」
「でも……」
「レイシ、普段僕たちに言うじゃん。休んでおける内に休んでおいた方がいいと思うよ?」
「うっ……」

 アポロンに言われ、俺は何も言い返せない。
 確かに……。あんな階段上ったし、1日に4人も解放したし、疲れていないわけがない。

「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「それがいいわ」
「じゃあ、行こう」

 日本神社の神さまたちに先導され、進んでいく。
 ――俺の捜し人は、ここにも居ないのか。一体どこに居るのだろう?
 正直、気の遠くなるような話だ。もしかしたら、捜し人は最後の方に居るのかもしれない。
 何しろ「やおよろず」だ。

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