想いの監禁生活 |
「……ただいま」 お帰り、の言葉は、もう無い。 臨也は履き慣れた靴を玄関で適当に脱ぎ捨て、暗いリビングへ向かった。 「……何してんだろ、俺」 澪士はもう、死んじゃったのにさ。 臨也は悲しそうに表情を歪め、リビングの電気を点けた。 「澪士……澪士、澪士」 名前を呼べば、すぐにどこからかやってきそうな気がする。 何ー? とか言って、可愛らしく壁の陰から顔を出して。 おいで、と言って抱き寄せたら、その後は……何をしようか。 そこまで考えて、その相手は今は亡き人だと思い出した。 「……死んだの? ねぇ」 君が死んじゃったなんて、ねぇ俺、思いたくないんだけど。 そう思って、臨也は自室へ向かう。 大きな扉を開けると、そこにはいつもと変わらぬ寝顔を見せた澪士が居た。 「澪士……」 そっと頬を撫でる。冷たさが臨也にその死を教えた。 「ごめんね……もしかしたら、澪士はこんなこと、望んでないかもしれないね」 でも、俺、やめられそうにないんだ。澪士を奪った人への復讐。 笑みながら言うその人は、澪士を奪った人も知らないのに。 手当たり次第に壊してゆく、さながら幼い子供だった。 「澪士……」 君と同じ所には行けないかもしれない。 それでも、俺は……。 「ごめんね……」 その温もりを思っては、臨也は涙するようになっていた。 10-9/23 (絶対に負けないって、決めた) (俺は澪士以外には、負けない) 大切な事を忘れている臨也 前頁│次頁 |