契り |
「……眠たいなら寝なよ、澪」 「……ううん」 落ちかけた瞼を必死に支えながら、俺は答える。 「眠たいけど……でも、新しい年に、なるから」 「そうだけど」 一緒に床に転がっていた臨也は笑う。 「初日の出も、見たいし」 「それは随分先だね」 「いい夢、見たいし」 「それは運次第かな」 「……臨也、一緒に寝てくれないのか?」 「……どうしてそうなるわけ?」 臨也の訝げな視線に、俺は目を落とす。 「変な心配したかも。ごめん」 「だから、どんな」 「ずっと一緒に居られないかもって想像」 馬鹿だって笑ってほしかった。 いつものように、撫でてほしかった。 ――でも、臨也はそんな事はしてくれなかった。 「……そうだね」 はっとして俺は顔を上げる。 「俺達がずっと一緒に居るのは無理だろうね」 「臨也……」 「なに、澪が先に言った事でしょ?」 不安は、口にすれば更に大きくなる。 それを肯定された事で、更に怖くなる。 けど――俺の頭を撫でる臨也の手が、それらを全て消し去ってくれた。 「でもね。できるだけ一緒に居る事ならできるよ」 あの時。俺も死んだと思った時。 死にたくないと2度目に思った時、俺は死んでしまった。 「今年、悪かった事は全部忘れて。来年、楽しい事が沢山起こりますようにって」 「……悪い事ばかりだったから?」 「ばっかりでもないでしょ」 ――そうだ。 「ごめん」 「いいよ」 俺達は1度失くしたものを、もう一度取り戻したんだった。 「ねぇ、臨也」 「ん?」 「除夜の鐘って、煩悩取り払うんだってさ」 「……うん」 「取り払えてると思う? 俺達」 真面目な顔で聞くと、一瞬のち、臨也はふと笑った。 「無理だね――だって、来年もそういう事するつもりだし」 「ひゃっ!?」 「眠いなら、起こしてあげるよ」 身体を触られ、変な声が出る。……え、そんなつもりなかったのに。 俺の上に載ってきた臨也。不敵に表情が歪む。 「除夜の鐘なんて聞こえなくなるかもね」 「っ、そんなに喘いだりしないし!」 「俺まだ何も言ってないけどなぁ」 「……っ!」 ……ムカつく! けど俺は結局、逆らえないのだろう。 悔しいけど臨也が大好きだからね! 来年こそいい年になりますように! 10-12/31 よいお年を^^ 前頁│次頁 |