最初からこうなるようにできていた |
「お帰り」 「……ただいま」 あぁ、こういう感覚だったのか、と静雄は最近帰ってくる度に思う。 「ご飯できてるよー。お風呂もわいてるけど……」 そこでじっと見つめられ、静雄は思わず口を閉じた。 「……どっちにする?」 多分、澪士と零が似ているところは、こういうところなのだろう。 双子は例え離れていても、思考や好みは似るという。 つまり、組み込まれた遺伝子の問題なのだ。 「……メシにする」 「あ、そう」 じゃあ後で一緒に入ろうね、とへにゃと零は笑って。 赤面するのはいつも静雄だ。 「今日のご飯は煮物だよ」 そう言いながら、零は先にキッチンへ戻っていった。 お帰り、と言われるのは、嬉しい事だ。 一体いつ以来だろうと静雄は考える。 ――昔は、分かりたくないと思った。でも今は違う。 突然愛する人を奪われた臨也が、人が変わったようになったのが。 今、静雄だって、もしも零が殺されたりすれば平常心を保てなくなる気がする。 ……いや、確信を、持っている。 「……静雄?」 「ッ!?」 いきなり声をかけられ驚くと、目の前には零が居た。 「もしかして今、俺の事考えてた?」 「な、なん――」 「だって、すごい、真剣だった」 ふっと笑って零は離れる。 「静雄はいっつもそうだよね。俺の事を考える時、真剣な表情になる」 「そ、それは……」 「分かってる」 ずっと俺の事、好きでいてくれたんでしょう? ……何故、わかるのだろうか。 「俺も静雄の事考えてる時、いつも真剣だった。仕事の事さえ忘れたよ……好きだったから。……だから、静雄もそうだったら良いなって、ただの願望なんだけど」 静雄はその瞬間、何も考えずに、零を抱きしめた。 「しず……?」 「零。……ずっとお前の事、好きだった」 打算が働かないわけがなかったのだ、あの瞬間……。 男達に囲まれる彼を助けようと思ったのは、善意だけじゃない。 「一緒に住んでんだし、当然の事だと思うかもしんねぇけど……俺、多分、1回も言ってなかったよな」 「……うん」 「……だから、」 壊さないように、ゆっくり。 折角抱きしめたものを、もう、放したくはないから。 「……ん、」 子供がするような、唇がただ触れ合うだけのキスをした。 零が驚く様子がゆっくりと、スローモーションに見える。 「……静雄」 静雄の方をじっと見上げたまま、零は笑った。 「俺もね、ずっと好きだったよ。……あの人にだったら助けてもらってもいいなって、思ったんだ」 図々しいんだけどね、と苦笑する。 「……あの時に会ったのが、静雄でよかった」 ご飯冷めちゃうよ、と笑いながらも2人はまた唇を近付け合った。 10-11/23 (……なに、今まで2人は付き合ってなかったの?) (? うん) (――普通に手つないでたのに?) 前頁│次頁 |