光らずとも

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 いい人だよ、と囁かれたのを、勿論俺は知らなかった。
 歩いて新羅の家へ向かう。
 驚く程に、それらの家はそれ程遠くはなかった。

 ――それでも、脂汗が浮く程、激しい頭痛なのだ。
 今まで新宿と池袋に引き裂かれている間は尋常でなかったに違いない。






「澪、久しぶりだね」
「零……」

 白いベッドに腰掛ける零。
 笑顔を浮かべる零に対し、澪士は当然困惑を隠せないようだった。

「何で……此処に……?」
「俺達、繋がってたんだよ。ずっと」

 零は笑みを湛えたまま、視線をこちらに寄越す。
 それにつられ、こっちを見る澪士。

「え……」

 俺と、目が合った。

「臨也!?」
「澪士」

 ゆっくりと歩み出す。
 長かった空白の時間を埋める様に。
 零もゆっくりと離れていった。

「臨也……あの、ごめん……俺、あの日、途中で、よく分かんなくなって……」
「澪士」

 そっと、痩せた澪士の頬を包み込んだ。
 大きな瞳を開いたまま、口をつぐむ。

「あの日、俺の世界が終わった。澪士の居ない世界なんて俺には考えられない」

 今までも細い身体ではあったのだが、暫く見ない内に、本当に痩せてしまった。
 華奢な程度は良いのだが、……これは、痩せすぎていて。

「死んでしまうかと思った。……俺らしくない。澪士の身体を抱きしめて、泣いた」
「俺の……?」
「誰かが澪士のレプリカを作ったみたいだね」

 しかし、その腕をシズちゃんがひきちぎってくれたお陰で、俺の目は覚めた。
 今までそんな事も気付かなかったなんて俺は本当に馬鹿だったと思う。

「……また、出会えて、よかった」
「……っ!」

 強く抱きしめた。潤む瞳を見られないように。
 澪士もまた、きっと泣く姿を見られたくはないだろうと思って。

「あ、ぁ……臨也……っ!」

 ごめんなさい、ごめんなさいと泣きじゃくる澪士。
 あぁ――謝る澪士も悪くないんだけど、出来れば、笑ってほしい。
 助けてくれてありがとう、って。

「……大好き……」
「!」

 肩口でそっと、囁かれる言葉。
 それ以降はただ、身体を震わせ泣くだけで。

「……澪士……」

 堪えていた俺も、ついに涙を流してしまった。


















10-11/23
(ありがとう、)
(あなたの事信じてた)


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