会場へ



「ハンター試験かぁ。面倒くさいよね。ひーちゃん、連れてって」
「……君は少し、自分で歩くってことしなよ◆」

 そう言いながらも、ひーちゃんは俺を抱き上げてくれる。まるで荷物でも持つように、軽々と。
 俺はひーちゃんの全てを知っているわけではないが、こうして気楽な関係を続けていられる程度には、親しかった。

「でも結局甘やかすひーちゃんが悪い。……ぎーちゃんは先行ってていいよ?」

 ぎーちゃんはかくかくと首を動かす。きっと頷いているつもりなのだろう。
 というかそれより、何と悪趣味な顔なのだろう。変装するにしても、もう少し趣味のいい顔があった筈なのに。
 ……いーちゃんにしては美的センス、感じられないよね。鋲は痛そうだし。

「ひーちゃん、ゆっくり歩いて。俺、痛そうだからいーちゃんの顔、見てられない」
「別にいいけどね◆今はイルミじゃなくてギタラクルだよ◆」
「……どっちでもいいじゃん」

 ぎーちゃんの顔は、何を考えているか分からなくて嫌いだ。……いーちゃんも大概分からないけど。
 でも、喋ってくれるだけ、いーちゃんの方がましだと思う。

「……やっぱいいや」
「ん?」
「先行こう、ひーちゃん。……50番台までに入らないと、泣くから」
「泣くって……それは怖い◆」
「分かったら、早く」

 俺はひーちゃんを急かす。ひーちゃんは笑いながら走る体勢になった。
 じゃあねとぎーちゃんに手を振り、次の瞬間には、ひーちゃんは空中を疾駆していた。

「……ヒソカはいーちゃん、待たなくてもいいんだ?」
「何を言ってるのかな、君が言い出したことだろ? ……それにしても、いきなり甘えてくるなんて、珍しいね◆」
「……その喋り方、やめてよ」

 道化がかった話し方より、普通のヒソカの方が、俺は好きだ。

「君が、50番台に入りたいって言ったんだろ◆ならボクも、本気を出そうかと思ってさ◆」
「ヒソカの本気とか、笑えないから冗談でもやめて。……まぁ多分、いーちゃんとは試験会場で会えるよね」
「あんまりイルミと話すと、怪しまれるよ◆」

 何を言ってるのかと思い、目の前にあるヒソカの横顔を見つめた。……いつ見てもキレイだ。
 大体、俺たちが一緒にいること自体が目立っているというのに。

「……ヒソカ、キスして」
「……君はいつも突然だよね◆」
「いいから。早く」
「……君からすればいいのに◆」

 すると、スピードが落ちて、流れていく周りの景色が止まった。
 キスされている――気付いた時には、口内に舌が侵入していた。
 俺は必死にヒソカの肩を押し返す。

「……っ、ヒソカの、ばか!」
「顔真っ赤にしちゃって、可愛いね◆興奮しちゃった?◆」
「……興奮したのは、ヒソカの方だろーが……」
「でも、押し返すなんてひどいよね◆自分からしてほしいって言ったのに◆」
「誰も濃厚なやつなんて言ってない!」

 見てたら、何だかヒソカの唇に触れたくなっただけだ。……あぁ、もう。
 ヒソカがこちらを見てにやにやしていたので、俺はもうヤケになって、ヒソカの首に手を回しキスをした。

「……ん、」

 一瞬で離れる。声を漏らしたのはヒソカ。
 ……これ以上煽って、こんな森の中でヤってしまう羽目になるのはごめんだ。
 ヒソカの顔を見ないようにして肩にしがみつき、俺は小さく呟く。

「もういいよ……行こう、ひーちゃん」
「……そうだね◆」

 ハンター試験が終わるまでの我慢かな◆と耳元で小さく笑って、ひーちゃんはまた疾風となった。










ハート出したかったのにな…今こそ使う時だと思ったのに…(早い


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