「静雄、俺もそのサンドイッチ食べたい」
「手前がノミ蟲から離れたら考えてやってもいいぞ」
「考えるだけかよ……。それとこれは俺の意志じゃない」
「そうか、それは残念だ」
――時々、俺は静雄に嫌われているんじゃないかと思う。
それはこうして昼休み毎に臨也が自分の膝の上に俺を座らせているからかもしれないし、その手が不穏な所を探っているせいかもしれなかった。
しかし、臨也の力は異常に強い。
(静雄に言えば、それはお前が弱いだけだと言われそうだが。)
「臨也、臨也っ! 放せよ!」
「え、何で? 俺全然不便じゃないから、遠慮してくれなくていいけど」
「そういう問題じゃ――っ!」
思いきり殴ってやった。
「どこ触ってんだ、死ね!」
「……強力だね、澪士のパンチは」
「名前を呼ぶな!」
……俺、何でいつもこいつと一緒にメシ食ってるんだろう。
殴った際に拘束が解けたので俺は泣きながら静雄のところに行く。
「うわーん静雄ー」
「……澪士も、やればできるじゃねぇか」
「えっ、何?」
目の前に差し出されるサンドイッチ。
俺は嬉しくてそれを凝視してしまう。
「……要らねぇのか?」
「要るっ!」
がぶり。一口には多過ぎる量をかじりとる。
軽く頭を叩かれたが痛くないのでよしとする。……美味しい。
「よし新羅、購買行こうぜ!」
「いや、僕には愛情の篭った特製弁当が……」
「何言ってんだよ、飲み物だってば!」
渋る新羅を連れ、俺は暖かな屋上から1階へと向かう。
「……ここに、ブルーシートが敷かれないように気をつけなきゃな」
「え? 何?」
「何でもないよ」
屋上からの階段を1つ下りた所の踊り場で、新羅は不意にそう呟いた。
(新羅、分かってて行ったの?)
(え、いや私は、誘われただけだし、)
(そうだよね? ほらシズちゃんも怒ってるよ?)
(そんな、)
(……仲いいな、あいつら)
(そう見えるのはお前だけだろうよ)