「うー、ただいま。寒かったなぁ」
「お帰り――って、どこに行ってたの!」
「え? ゴミ捨て」
まだ秋だというのに、早朝ともなるとめっきり冷えるようになる。
流石に息が白くなるということはないが肩を揺らして帰ってくると、いきなり臨也に抱きしめられた。
「い、いざ――」
「もう……冷たくなってるよ、澪士」
その後、暖めるつもりなのかどうかは知らないが、丁寧にキスをされる。
もう外の寒さなんて忘れてしまった。他に用事はなかったかな。
引いた銀糸を名残惜しく見つめると、臨也は笑う。
「……そうだ」
「?」
いきなり思い付いたように、俺の手を握る臨也。
硬い、丸い何かが手の平に押し付けられた。
「おつかい、頼むよ」
「え? 何を――」
「いいから、いってらっしゃい」
澪士の好きな物を買っておいで。
閉まる重厚な扉の隙間から、そう聞こえた。
「……ふふ」
嬉しくなってスキップなんてしながら、今度はうんと時間をかけよう。
そう思った。
10-9/10
(……て、これ、10円じゃんか)