「澪士、料理したい?」
「ん?」
唐突な問いに俺はファッション雑誌から顔を上げる。
「いや。俺は、臨也の作った料理が食べたい」
「っ、可愛い事言ってくれるね、澪士は……」
「?」
あまり聞こえなかったが、臨也は何事か呟くとまた踵を返す。
あぁ、いいんだなと思って雑誌にまた目を落とすと、今度はその状態のまま話し掛けられた。
「あのさぁ澪士」
「んー?」
雑誌の方を疎かにしながら聞く。
「……もしかしたら俺、たまに新羅のトコに預けるかもしれない」
少し間があったが――何だそれ。
俺は首を傾げる。
「うん」
「泊まらせる事もあるかもしれないよ?」
「うん」
いいよそれで、と言ったのが、話半分に聞こえたのかもしれない。
臨也は料理中にも関わらず、くるりと振り返って俺の方を見た。
「いいの?」
「いいよ」
臨也が大変なのは、俺も分かっているつもりだった。
つもり、なのはそれでいても、無意識の内に自殺未遂を繰り返すから。
うーん、何でだろうなぁ? 今の生活に満たされないところでもあるんだろうか、俺。
てかこのままこういう事を続けていって精神病院に入れられる方が、余程辛い人生だと思う。
考えたくはないけど――臨也に捨てられる、とかさ。
「いいの。臨也はたまに休んで。いっつも俺抱えて大変でしょ? まぁ結局滞在先にも迷惑かけるんだけどさぁ……、」
その後は、濁した。
俺は臨也の背中に言った。
――自分なんて死んでしまえばいいのになんて、思ってるからいけないんだろうか。
「澪士はいい子だね」
……そんな事、言われたくはなかったんだが。
だって、悪い子だから預けられているのに。
困った様に眉をしかめてみても、臨也はもうこっちを見ない。
『悪循環』。そんなの自分が1番分かってる。
嫌だなって分かってるのに、俺は雑誌をめくる手を止められなかった。
「澪士、こっち来て。手伝って」
「はぁい」
雑誌を閉じる。もう読むことはないだろう。
さよならばいばい、と小さく呟いて、ごみ箱に押し込んでから臨也の元に駆け寄った。