「なぁ新羅、新羅はカウンセラーにはならないのか?」
「カウンセラー?」

 俺を1人にするのは心配だと過剰に心配してくれた臨也の好意に甘え、俺は新羅とセルティの家に来ていた。
 臨也が居ないならと2人は喜んで上げてくれたのだが、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

「うん」
「……そういう事は多分、セルティの方が向いてる気がするんだけどね」
[そうか?]

 PDAの文字を見て笑った。うん確かに。
 セルティは向いてるかもしれないね、と言った。

[でも……澪士から見て、どうだ? 私は少しでも澪士を助けられているだろうか]
「え? はは、セルティ今更! 俺セルティ大好きだよ、臨也に話せない事も沢山言えるし」
「よかったねセルティ」
[あぁ]

 セルティは嬉しそうだ。雰囲気で分かる。

「……だからさ、俺の事……救ってくんないかな?」

 ぽつりと呟いてみた。
 訪れる沈黙。
 俺が悪いのに、静寂を破れない。

「……臨也が居ても駄目なのかい?」
「うん……いやでも、臨也が来てくれると凄く安心する。臨也が居た所ではやった事ないけど……」
「僕達が居る所でもやった事なぶふっ」
[空気を読め!]

 セルティの右ストレートが決まった。
 その綺麗さに俺は思わず拍手を送る。

「はは。でもいいんだよ。そうだよ俺、皆の前でこんな汚い自分を見せたくないんだ。だからかもなぁ」

 窒息死は醜いもんね、と言う新羅は嫌いじゃなかった。きっと臨也からこの間の事を聞いているのだろう。
 うん、本当、俺ももう窒息死は嫌だな。汚いからなぁ。無意識の俺、別のモンにしてくれ。
 心の中で願った。

「――でもさ、臨也の判断は間違ってないよ」
「うん?」

 新羅の言葉に俺は首を傾げる。

「普通はそんな自殺中毒者、家で1人にしておかないじゃない。まぁ臨也は仕事があるから仕方ないと思うけど」

 ふんと縦に振る。

「でも1人にするなら普通は物片付けるよね。危ない物とか。服とかも破かれないようにする筈だ、その気になったら君を縛る事だってできる筈」
「……あ……」
「分かった?」

 隣でPDAの音。
 続けて、という事らしい。

「でもそんな事したら確実に自傷行為にはしるよね、澪士は。多分抑圧された状況でしか自分を傷付けていないんだと思う」

 ――あぁ、そうか、そういう事か。そういう事なんだな。
 俺は何となく分かった。

「臨也はそれを分かってる。だから澪士を叱ったりしない」
「そうだ……あいつ、俺を抱きしめる事しかしない、」
「でしょう」

 ふうっと小さく溜息をつかれる。

「……もっと自分と、臨也を大事にしなさい。と言っても、無意識でやってる澪士には意味ないか」

 大事にしなさい、と言われて俺は考える。
 ――最近、臨也に『好き』と言っただろうか?

「臨也も相当神経参ってると思うんだよ。仕事から帰ってきたら君が自殺未遂してて。休む暇ないんじゃないかなぁ」
「新羅、」
「うん、ここでは泣いていいよ。だから臨也を甘やかしてあげて」
「うん……うんっ」

 涙が出てきた。そうだった。
 俺は臨也に迷惑をかけっぱなしで、何1つ返せていない。
 だからせめて、明日は。

「明日……臨也、仕事おやすみなんだって」
「そっか」
「だから俺、ずっと臨也の事愛すよ」
[あぁ、そうしろ]

 新羅とセルティが優しすぎて、涙を止めた俺は微笑む事しかできなかった。


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