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煉獄の炎に包まれて(イルミ)

「愛してる、」

 言ってから後悔した、いや、正確に言うなら、おれは反省した。
 だって返事は無い。
 暗殺を生業とする彼が、どうして、そんな不確かなものに拠り所を見出だせようか。

「……間違った」

 折れるのは、いつだっておれの方が先。
 嫌われこそすれ、好かれるなんて有り得ない。だからこそ、せめて。
 彼の側に置いてほしいと。

「イルミ、次帰ってくるの、いつ」
「暫く居ないよ。仕事したら、一旦実家に帰るつもりだから」
「……そう、」

 実家に帰る、ということは。
 面倒事を自分から請け負いに行く、ということで。
 とゆうことはやはり、おれは愛想を尽かされたのか? 判らない。
 でも、同じ家に集っていることが、彼がおれに関心を持っている唯一の証拠だったりして。

「眠い。寝るね」
「レイシこそ、ここには暫く居るつもりなんだろ」
「ん……うん」

 おれは、別に暗殺を生業としているわけでも何でもないけれど、引越癖があった。ただそれだけ。
 身元がバレて困るような職業に就いているわけではない、決して。

「そっか、安心したよ」

 でもだからこそ、おれはこうしてイルミと付き合えているのかもしれない、と思う。こうして対等に。
 これが例えば暗殺者だったとしたら、犯罪者だったとしたら。一般人だったら。
 多分、無理だと思う。

「……なんで」
「オレが帰るべき場所はここだから」

 ああもう、何でそういうことはしれっと、真顔で言っちゃうんだ、イルミは。いつも真顔だけど。
 そんなことを言われて照れるのはおれの方。おれはタオルケットを引き上げ赤くなった頬を隠す。
 あ、言い忘れたけど、今おれたちはベッドの上にいる。同じベッドの上。これもなかなか貴重な体験。
 しかしこんな早朝から、溜まった熱を吐き出すためだけに起こされるおれの身にもなってほしい。ばか。

「……イルミなんか早く仕事行っちゃえ」
「言われなくてもそうするけど」

 今はもう少しここにいるよ、なんて言って、彼はおれと同じタオルケットに入ってきた。








(いつか神様が過ちに気づいて)
(おれが裁かれる日まで)
(どうか側にいて)

(おれのこと、忘れないで)

イルミ好きです



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