自動喧嘩人形VS人間愛情報屋


「そういえば情報屋さんー」
「何?」
「あんたは人間を愛してるって聞いたんだけどー」

 そこら中、コンクリートをもへこませる攻撃が絶えないので、話すには声を張る必要がある。

「それって本当?」
「本当だよー」
「……じゃあ何で、しずは駄目なのー?」
「……それは」

 折原は標識をかわしナイフを突き出す。

「シズちゃんは人間じゃないからね!」

 普段はあまり決着がつかないのだと聞いた。折原が逃げるから。
 でも――今のは、違った。
 折原のナイフがしずの太腿に突き刺さる。

「しず!」
「喧嘩をけしかけたのはお前だろ? だったら黙って見てろ!」

 ……それは、そうなんだけどさぁ……。
 俺だって、痛いのは嫌だ。幸運の女神サマがついてるから滅多に当たらないけど。

「……危ない」

 しずは右足に怪我を負っている。
 けしかけたのは俺だし止めるつもりなど更々なかったが、「危ない」と言ったのは群集に対してであって。

「しかも、なんか増えてる気が……」

 普通、喧嘩というのは忌むべきである。
 特にこんな、人間離れした喧嘩なで尚更。命が惜しくないのだろうか。
 ……まぁ、けしかけた俺も俺だが……。
 そんな風に考えながら尚見下ろしていると、いきなり折原が舌打ちした。

「戦いにくいなぁ……」

 多分ギャラリーの事を言っているのだろう。同感だ。
 しずも辺りの物は殆ど投げてしまったし、もう潮時か。
 そんな事を考えた瞬間だった。

「……え?」

 目の前に随分綺麗な笑顔が在る、と思った。
 身体が不自然に浮いたと悟ったのは次の瞬間で。
 折原に抱き上げられている、と気付いたのはもっと後だった。

「え――ちょ、何して――!」
「ここじゃ集中できないよ。瀬梨ちゃんが有名人なのは分かったからさ」
「有名なのはあんたらもでしょ!」

 『ちゃん』なのはもうこの際許す事にする!
 だから下ろして!

「――どこ行くの?」

 恐る恐る尋ねる。……嗚呼、答えはあまり聞きたくないんだけど。
 唇の端を吊り上げる折原。背後の怒号はもう聞こえない事にした。

「新宿」
「……いや、それは分かるけど……」
「あぁ、もっと分かりやすく言ってほしいって事?」

 嫌な予感しかしないけれど多分聞かなきゃ始まらない。
 俺は小さく頷いた。

「俺の家」






 ――嗚呼、主よ、あなたは俺を見捨てたもうたのか!

















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