会合記録


 それから時折、瀬梨は家を空けるようになった。
 自分が外に出ても構わないのだと知ったからか、誘いが続いているのかは分からない。
 けれど俺たちに断りなく家を出た事は一度もないし、あまり朝帰りもしなくなったから、別にいいかな、とか思っていた。

 今日の朝、久々にパソコンを立ち上げるまでは。



 まず、この2週間、俺が何をしていたのかを弁明する必要があるだろう。
 本業である“情報屋”としての業務を疎かにしていたのか、と言われそうだから。
 まぁ確かに俺は怠慢だった、でもそれは瀬梨が来てから同じようにそうだっただけのことだ。
 今更どうというわけではない。

 だからつまり、俺は日常の家事に追われていた。
 普段、つまり朝とか昼のご飯を作ったり洗濯をする事は瀬梨の仕事なのだが、夜は時折、いいよという事があって。
 ちなみに「いいよ」とは、「夕食は俺が作っておくから」の意である――言わずもがな、瀬梨が出かける日のこと。
 あぁそう、ありがとう、と言って瀬梨は笑うから、俺はそう申し出るのを辞められなくなった。
 つまりは泥沼。



「――馬鹿だ」

 侮蔑。ていうか自己嫌悪。
 他人の事以外で笑う俺なんて珍しい。

「まさかこんな事になってるなんて誰も思わないだろうけどな……でも、まさか」
「何を1人でぶつぶつ呟いてんだ、手前は」
「シズちゃん」

 顔を上げると、ちょうどいいところに。

「シズちゃん、ねぇ、これ見てよ。シズちゃんはこれ、知ってた?」
「あ?」

 機嫌は急降下。しかし気になったのか俺が指すパソコンの画面に近付いてくる。

「……これ、何だよ」
「何って、「灰猫教」の活動記録だけど」
「――これって」

 「灰猫教」のホームページは、俺の技術を駆使するまでもなく、堂々と検索エンジンに引っ掛かっていた。
 隠す必要もないのだろう。都内で行われた会合がブログ形式で綴られている。
 最近の日時は、一昨日だった。

「こいつ、どう見たって瀬梨じゃねぇか!」

 シズちゃんは叫ぶ。煩い。……でも、怒りをぶつけたい気持ちは同感だ。
 何故、こんなところに、こんな下らないホームページに彼の姿は晒されているのだろう。
 “池袋のラッキーキャット”、目にするだけで幸運なのに。

「そうだね。詳しくは解析してないけど、どう見たって瀬梨だと思うよ」
「何で……待て、あいつ、何でこんなサイトに」
「決まってるじゃん」

 答えはたった1つだ。
 俺は表情を変えないまま言う。

「瀬梨はやっぱり、「灰猫教」と関わりがあるんだよ」



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