朝帰り


 絶賛☆シズちゃんの尋問タイム。



「昨日は夕食作ってたよな?」
「うん」
「そのあとどうやって家から出たんだ?」
「どうやってってか、うーん……別に、普通に出たけど」

 瀬梨は首を捻るばかりで、尋問はそれ以上進まない。
 当たり前だ。瀬梨にとってはそれが普通なのだから。

「じゃあ質問変えるけどよ、お前何時に家出たんだ?」
「え? 昨日? えっと……4時」
「――はぁ!?」

 俺とシズちゃんが素っ頓狂な声を上げたのは、同時だった。

「なに?」
「4時って……お前、それ、出かけるって言った直後だろ! そんなすぐ出たのか?」
「うん。夜ご飯は作り終わってたし道に迷って待ち合わせに遅れたら困ると思ってさ」
「……あぁ、どうりで」

 どうりで妙に、ご飯が冷めていたわけだ。そりゃ納得。

「だったら俺たちが見張ってたあの時間は、既にこいつは出掛けた後だったってわけか」
「そうなるね」
「?」

 ――全く、何者なんだろう。少なくとも俺たちは、6時くらいまでは瀬梨が家に居るという錯覚をしていた。
 そりゃ、捜してもいるわけない。家には既に、彼は居なかったわけだから。
 でも、何で俺たちは気付かなかったんだろう?

「それも幸運の女神のお陰、かな」
「そうだよ! 俺には幸運の女神さまがついてるからね!」
「お前、絶対意味解ってねぇだろ」
「え、何が?」

 で、と俺は横から口を挟む。

「どこ行ってたの?」
「ん? 内緒!」

 俺たちは顔を見合わせる。
 ……「たち」、と言っても、俺とシズちゃんの事だけど。

「恋人の俺たちにも言えないようなところ?」
「ん? うん……だって、言ったら御利益なくなっちゃうもん」
「御利益?」

 ――なんか、ある意味、それが一番のヒント。嫌な予感しかしない的な意味で。
 嫌な予感、本当に嫌な予感しかしないけど、瀬梨の事は信じてあげなきゃ。
 たった1人の、俺の愛しい人だから。

「じゃあ今度も、出かける時は事前に言ってね」
「分かったよ」
「できるだけ、俺かシズちゃんがついてくようにするから」
「うん」

 心配性だなぁ、と彼は笑う。









(だって、朝帰りなんてされたら)
(そりゃ心配にもなるよ)



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