ある夜の猫


「あー……眠」

 そう呟いて目をこすったのは、もう何度めだろうか。
 それでも視線はパソコンの画面に張り付けたまま、彼はキーボードを叩く。

「全く……チャットなんて、面倒くさい。逃げちゃおうかな」

 落ちます、とだけ打ち出し、彼は迷う事なく退室のボタンを押した。
 ROMにはならない。どうせいつものように別れの挨拶を並べ――自分が落ちたから、ぞろぞろと落ちていくだけの事である。

「あーあ、お腹空いたなぁ……寝る前になんか食べようかな」

 そう言って彼は椅子を回し、小さな冷蔵庫を覗いた。
 冷蔵庫の中には、2Lの茶のペットボトル。――食べ終わったチーズの包装。
 少しの間それらを凝視した後――それ以外には何も入っていないのだと認識するまで――彼は憎々しげに舌打ちをすると、荒い動作で扉を閉めた。

「くそぅ、俺はこんなに腹減ってるっていうのに……」

 仇なす凡愚どもめ、とか何とか呟いて、彼は立ち上がった。

















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