そんな馬鹿な


「ちょっとぉ! 俺を助けてくれたのは分かるけど、ここ俺ん家だし! 外でやってくれるかにゃあ!?」
「……瀬梨?」
「……え?」

 明らかに心外だ、という声で言われたので、俺は聞き返す。
 しかし口を開いた瞬間、しずは派手にぶっ飛ばされていった。

「し、しず……」
「ノミ蟲……手前、よっぽど殺されてぇみたいだなぁ?」
「瀬梨ちゃんに気付いてなかったシズちゃんに言われたくないよ」

 あ、あぁ、標識が、玄関フードを……。
 もう嫌だ。泣きそう。しにたい。

「お願い……やめてよぉ……」
「そもそも手前がこんな所に住んでなきゃ、」
「こんな所って瀬梨ちゃんに失礼じゃない?」
「いや、頼むからやめて!」

 終わらなさそうだった。
 だから俺が間に飛び込んだ。

「ちょ、これ以上壊したら、修理費宝くじじゃ賄えなくなるから……やめて……」
「おい、そこよけろ、瀬梨」
「人の話は聞いてよ!」

 ……駄目だ。しず今ブチ切れてるっぽいぞ。どうしよう。
 全ては折原がまいた種なのに、俺が回収しなければならないのがまた辛い。

「折原ぁ、何とかしてよ……あんたがまいた種でしょうが」
「え? 俺? うん、そうだな……」

 折原は少し考えた後、俺の肩に腕を載せた。

「シズちゃん、いい加減やめないと俺の恋人がキレるよ」
「……は?」

 ――折原に、恋人って居たんだ。あんなに性格悪いのに。顔しか見てないんだなきっと。
 しかしその想いはしずも同じだったようで、呆けたようにそう言ってそれきり黙ってしまった。

「手前の恋人って――」
「ん? あぁシズちゃんは知らなかったっけ」

 耳元で、折原の声がくすぐるように。
 その囁きがあまりにウザいと思った瞬間、彼は大変な事を言った。

「瀬梨ちゃんだよ」








何を言っているんだろう、と
その瞬間、空気が凍った



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