「レイシ様」
「なにオルフ」
ごろりと毛布の上で寝返りをうつ。
「アメティストス様がお呼びです。早急にテントに来るようにと」
「んー……」
「…………何か?」
オルフの口の端がぴくりと上がる。彼が怒っている証拠だ。
しかし俺は奴隷軍の旗揚げ当時から居たから、地位的にはエレフの次だ。オルフは厭味を言う事もできないのだろう。
何しろ俺は、彼が『アメティストス』ではなく、『エレフセウス』だという事も知っているんだから。
……念のため、誰にも言ってないからな。疑われてるかもしれないから言っとくけど。
「……あのさ、オルフ」
「はい?」
いつもの通り引き留められると分かっていたのか、オルフは用件を言っても下がろうとしなかった。
流石俺の扱いに慣れている。
「アメの所行くの、オルフが止めたから行けなかった、ってのは?」
エレフとは、当然の事ながらオルフより俺の方が親しかった。
なのにわざわざオルフに罪を被せる様なことを言ったのは――彼の『愛』を試しているから。
あれでなかなか、彼はしたたかである。
「はぁ……レイシ様のことですから、そのような事だとは思いましたが」
「なに、お見通し?」
「はい」
仰向けになってじっとオルフを見上げると、彼も同じ様に見下ろしてきた。
そしてすぐに溜息をつく。
「あなたのそんなとこ、嫌いになれないんですが……まぁ、そういう事にしておいてあげますよ」
「えっ」
マジですか、と言うと、マジですよ、と答えが帰ってきた。ううむ、意外。
驚いて見上げたまま、固まっていた。
「じゃあいちゃつこう、オルフ」
「はい」
貴方がそう望むのなら、とオルフは俺の首筋に唇を押し付けてきた。
(あ、でも、もし私がこのせいで軍を出る事になったら、貴方も一緒に来て下さいね)
(えッ!)
事後でした。