お前の居ない世界なら、ここが『世界』である必要はない。
お前が居ないのに、ここで他の奴が幸せそうな顔をしているのも許せない。
俺は――復讐を、しようと思う。
お前を追放した、この世界に。
「くそ……っ!」
お前のその顔、絶対に忘れはしない!
腕を切り落としてやったそいつが叫ぶ。
「テメェのそのツラ……」
ムカつくんだよ。
幸せを滲み出したツラしやがって、俺の不幸がテメェに分かるか?
それっぽっちでは毛程も伝わらない事を知りながら、俺は奴の腕をもぎ取った。
「……赤い死神……」
なんと言われようと、俺はもう興味はない。
……もう、お前が居た世界には戻れないんだな? レイシ……。
俺は苦痛を与えた後にこいつを殺そうかと思っていたが、興が削がれたので、踵を返して立ち去った。
いつも来る場所が在る。
長い戦が始まってから、俺は1度も此処に来られなかったが。
――今でも、待ってくれているのだろうか?
「……久しぶりだな、レイシ」
小高い丘の上の小さな木を見ながら、俺は話し掛ける。
眼下に広がるのは無意味な明かり。人々がそこには住んでいる。
――奴らを全部殺せば、俺の苦しみを、少しか癒やせるか?
そんな事を考えながら月を肴に呑んだ。
「暫く来られなくてすまなかった」
お前の嫌いな戦が、長引いてな。
……これでも俺の力により、随分早く終結したのだろうと思う。
誰も知らないだろうが、俺は愛する人の為に戦いを終わらせた。
『愛』の尊さを知らない奴に、そんな事は毛程も分からないだろうが。
「でもな……お前を失った隙間は、誰にも埋められねぇんだよ」
俺はレイシと出会うまで、ずっと荒れた生活を送っていた。
命を賭けた攻防、でもそれが、この上なく心地よいと思っていて。
――レイシに出会うまでは、気付かなかったんだ。
平和、幸せ。
その2つが直結する事など。
「今俺は、お前に背く様なことをやってるか……?」
行った先の村で、女を見た。
渇いた心で『犯してやろう』かと思ったが、お前が蘇ったんだよ。
……俺に、お前以外を愛する事は、無理だってな。
「だったら……」
――すまない。
そう言って首を切り落とせたら、どんなに楽だろうか。
他の奴の首を刈り取る事は、もっと簡単なのに。
「……生きることは、辛い。死ぬことも辛い」
レイシが待っていてくれるなら、とは思うが、剣を持った手はどうしようもなく震えた。
「お前が居たら、何だって辛くなかったのに……」
何で――何で、死んじまったんだよ、レイシ!
俺は残りの酒を、2人で植えた木の上に注いだ。
10-9/4
赤ローランが、乙女乙女してる不良みたくなったorz
もし赤ローランが荒れている理由がこれだったら、ローランサンとかには悪いけど、私は許せる気がする。