幸セカイ?


 略奪も殺人も、何も無い世界。
 ローランはただ、俺の傍で、静かに暮らしている。




「……幸せなのは、嫌いか?」

 その赤い髪は、『死神』と恐れられた。
 彼は酷い人ではない、それは分かっている。
 けれど、そういう一面も拭い去れないのも、また事実。

「……嫌いじゃ、ない」

 言葉少なに答えるところは、嗚呼、前と同じだ。
 俺達の生きた世界――『物語』は、別の世界でも紡がれ続ける。

「じゃあ、退屈が嫌いなのかな」
「……あぁ」

 命を賭けるようなスリルが欲しいんだ。
 その言葉に俺は苦笑する。
 ――だったら、彼が戦争に行ったのも、人を殺したのも、少女を誘拐したのも、『スリルが欲しいから』という事になるじゃないか。
 今お前、世界の全てを敵に回すような事を言ったぞ。

「――俺との生活は、退屈か?」

 ローランの膝に手を載せる。
 ローランは顔をしかめる事もなく、俺の手を払った。

「初めは楽しかった。……お前の事が嫌いなわけじゃない、レイシ。ただ今は――」
「慣れちゃうとつまらないなんてね、贅沢だ」

 ずるい、と言って身体を寄せると、ローランは無表情のままキスをした。





















10-8/30
(――お前は、嫌なの?)
(俺がどんなに、お前に死んでほしくないと願っても)
(……お前には、届かないんだね)

パラレルワールド的な
ローランから矢印が出ていないわけではない……と、思う。



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