結婚したら、一軒家を建てようと思う。四天王はこのまま続けたい。デンジが負けない限り挑戦者は来ないし、仕事も多くはない、だからその分たくさん家に居られるから。それでも仕事がある日は、家に帰ったら、やんちゃな子ども達がばたばたとオレを玄関まで出迎えに来て、その後ろで可愛い奥さんが微笑んで、オレが子ども達を抱き抱えるのをクスクス笑う。子どもは男の子が一人は欲しい。休みの日は公園でキャッチボールをして、ああ、あとポケモンを育てさせて、バトルの楽しさを教えてやろう。で、奥さんは、あまり無茶させないでね、とオレを嗜めるけど、柔らかい眼差しでオレと子どもを見守る。そんな温かい、いつも笑いが絶えない家庭をつくりたい、な。
そんなようなことを一人で語っていたら、横でぼーっと宙を見つめていたデンジが、鼻で笑った。聞いてたなら相槌くらい打ってくれ、と内心思う。ていうか、オレの真面目な人生設計を笑いやがった。ムカつく。デンジはオレが文句を言うより早く、嫌がらせをする時の微笑みで、オレの耳元に顔を寄せた。
「そうだな、そしたらオレは毎日お前に何度も何度も電話して、今すぐ来いって呼び出して、お前が来なかったら家まで押しかけて、奥さんと子供の前で、オレのことは遊びだったのか、ってヒステリックに泣いてお前に縋り付いて、そのままキスしてやるよ」
なんてこと言うんだ、と思ったのは、耳を擽る声に一瞬跳ね上がった心臓が落ち着きを取り戻してからだ。あー、でも。その光景を想像して、無意識に口にしていた。デンジが無言で先を促す。
「いや、デンジがキスしてくれるんなら嫌がらせでも何でもいいやって」
「…ばかじゃねーの」
呆れたデンジがあまりにもきれいに笑うから、将来なんて来なければいい、と本気で思った。
220311
The ODEN Season!提出
素敵な企画をありがとうございました!