(オデン)
※喫煙者な二人



シンオウの冬、加えて夜、更に海沿いときた、この状況はもちろん最低だが、飲んだ後の火照った体と頬には冷たい風が心地良く、気分も思わず高揚し、ジーンズのケツに入ったタバコに手を伸ばし、一本唇に挟んで、定位置である上着の右ポケットからジッポを取り出し、風に揺らぐ火に温かさを感じながら点火した。吐き出した白い煙は寒さも相まってますます白い。そんな俺に、頭も顔も赤い男が横から、俺にも一本、なんて呟く。ぺちゃんこになったそれを差し出してやる。あと一本しかないじゃん、なんて言いながら、しっかり持っていきやがった。火、と手を差し出される。その手の平に、くわえてたタバコをじゅってやってやった、酔っ払いの悪ふざけだ。あっちい!なんて声裏返しながら奴が跳ねる。すげえアホ面で、笑いが止まらなくなって、煙がどっか変なとこ入って、思いっきりむせた。苦しい、でも止まらない、アルコールが体内を浸蝕してるのを今更感じる。

「お、お前っ!ふざけんな!火傷すんだろ!」

胸倉掴まれて、防波堤に押し付けられた。本気で怒ってる。本気で怒っている人間ほど滑稽なものはないな、なんてなんとなく思って、また緩む口元。オーバは舌打ちして、オレの手からタバコを取り上げた。まさか、仕返しにテメーにも根性焼きだコノヤロー!なんてされんのかな、って思って、タバコの行き先を目で追う。フィルターはオーバの口へ、それからタバコを挟んだ指、手がオレの腕を壁に押し付けて、もう片方の手はオレの髪をわしづかみにして、引っ張られて、で、オレとオーバの口が合わさった。唇むりやり開かされて、そこから流れてくる煙たい空気。思わずむせそうになる、のに舌が入りこんできて、絡めとられて、息が苦しい。つーか、タバコ臭い。のは、おそらくオレもだけど。とにかく息苦しさと煙たさと、あとほんの少しの気持ち良さに、アルコールでふやけた頭が更にぼんやりしてきて、なんかやばいな、って思ってたら、いきなりオーバが、あっちい!なんて叫んで離れて、勢いよく手ェ振ってて、なんていうか、哀れな奴、って思った。しかしふわふわしてたオレの頭はそんなことを思うだけで精一杯で体を支えられなくなったらしく、俺は情けないことにずるずる壁を伝ってその場にしゃがんだ。

「くそ、もうタバコやだ」
「……じゃ、さっきやったの、返せ」
「あー……、どっか行った」
「買って返せ」
「タバコ臭いからやだ」

タバコ臭い、って、オレの口がだろ、悪かったな、ただお前もなかなかタバコ臭かったけど、さっきの。息が上がってて言うの面倒だから、黙ってたら、オーバがしゃがんでオレの目線に合わせて、急に普段の面に戻った。

「おい、デンジ、……大丈夫かよ?」
「なんか、ぼーっとする」
「やっぱ飲み過ぎたんだって」
「違う、さっきのお前のが、やばかった」

今のオレ、頭が回んないせいかなんでか、とにかく素直。たまには悪くないかなー、なんて思ってるあたり、重傷。そしたらオーバ、顔真っ赤にして、わわわ悪い、なんてキョドっちゃって、かーわいー、はは、また笑いが復活。そしたらまたむっとして、笑うんじゃねーよ、って怒った。

「くそ、もっかいすんぞ」
「…ん、どうぞ」

タバコ臭い口でも宜しければぜひ。もうアルコールとニコチンとあといろいろで融解寸前のオレの脳みそ、ドロッドロにしてやってくださいなオーバ様。




220111

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