(ハヤトとマツバ)



この童顔と平均未満の背丈のせいか、おれが既に成人していることを知っている者は少ない。それを知る数少ない友人に飲みに誘われたとして、どこに断る理由があるだろうか。電話を切ってすぐ、慌てて支度をしてエンジュに降り立ったおれを、彼は既に外で待っていてくれた。それが彼の能力によるものか、おれの性格を理解してのことかはわからないが、彼の金髪を空から発見した瞬間、少し恥ずかしくも、確かに嬉しいと思った。

ジムリーダーの中で、年が近く同性であるおれと彼は、自然と交流が多かった。加えて、飛行タイプを専門とするおれはいつでもどこへでも飛んでいくことが出来たから、たいていこういう遊びはおれが誘って、彼のところまで行く、というのが普段のパターンだった。彼から誘ってきたのは今日が初めてだったのでどこか落ち着かなかった。今更少し緊張して、挨拶も少しぎこちなかったと思う。しかし彼は気にする様子もなく、いつも通り微笑んで、じゃあ行こうか、と歩き出した。

「…何かあったのか?」
沈黙に耐え切れなくなって、マフラーが揺れる背中に訪ねた。
「何かって?」
「だってマツバから誘ったのなんて珍しいから…そういえば初めてだ、って、なんとなく」
「いや…特に何もないんだけど、…誘っちゃいけなかったかな?」
振り返った彼の、困ったような、少し照れたような表情を見た時、顔に一気に熱が集まるのがわかった。なんだこれ。なんで、おれ、こんなになってるんだ。混乱するおれに気が付いて、彼がおれの顔にぐっと顔を近付けて、どうしたの、と尋ねてきた。
「顔赤いけど。あ…もしかして、体調悪かった?」
本気で心配されて慌ててしまって、この顔の火照りをごまかすことを最優先に考えたおれは、顔を覗きこんでくる彼の肩を軽く押し返し、彼の質問に肯定で答えた。
「そっそうかもしれない、けど!全然平気だから!それに、せっかく来たしな!!」
それは明らかに体調が良くない人のテンションとは掛け離れた調子だったものの、彼の目にはそれが空元気に映ったようだ。そうか、と一言呟いて、何やら考え事を始めた。
「わかった、…じゃあ、体調があまり良くないなら僕の家にしとこうか」
ね、そうしよう。彼は一人で結論付けて、くるりと踵を返した。これから、マツバの家に。頭の中で反復して、本当に熱が出そうになった。おれはいったいどうしてしまったんだろうか。おれは彼に何を期待しているのだろうか。




211217
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