(ミナマツ)
※現代パロ
※ヒビマツ家庭教師パロの間くらいの話です



真正面に座っていた彼は、突然お茶を噴き出した。慌てた様子で口元を押さえて、忙しく咳込む。

「汚いなぁ」
「君のせいだっ」

落ち着いた彼は、ため息をついて、噴いたそれを飲み直す。汚いなぁ、と再び呟いたら睨まれた。たいして噴いたわけじゃない、と聞いてもいないのに弁解をされて、苦笑いで聞き流す。

「で、なんだ、教え子って、例のヒビキくんか」

彼の台詞こそ疑問形ではあったが、口調は断定だった。頷いて、詳細を話すと、段々と彼の眉間にはしわが寄り始めた。その様子が面白くて、思わず笑ってしまった。それが彼の機嫌を更に損ねてしまったようで、湯呑みが大きい音を立てて机とぶつかった。

「ごめんってば、ミナキくんが面白い顔するから」
「悪かったな、この顔は生まれつきだ。だいたい、私はそんなことで怒ってるんじゃない」

そこまでで、彼は急に黙り込んだ。無言で先を促す。ぼそぼそと呟かれた言葉は、あまりにも予想外だった。

「他の男のことを楽しそうに話されて少し妬けただけだ」

自然に、え、と間抜けな声が漏れた。顔に熱が集まるのがわかった。ああ中学生相手に私も大人げないな、と伏せた彼の顔も赤く染まっていた。かわいい、と思ったが、口に出したら怒りそうなので、心の中に留めておいた。しかし、代わりに出すべき言葉が見当たらない。苦し紛れに放った、

「大丈夫だよ。僕は……ミナキくんだけ、だから」

自分の台詞に恥ずかしくなって、視線を彼から外した。瞬間、机が大きな音を立てて揺れた。何事かと思ったら、ミナキくんが立ち上がった時に足をぶつけたらしい。が、そんなことは構いもせず、反対側の僕の方に回ってきたかと思うと、勢い良く抱きしめられた。これなら顔を見られなくていい。でも、少し苦しい。行き場を無くした手を彼の背中に置く。反応はない。

「ミナキくん?」
「……私だって、」

彼の低い声が耳を掠めた。くすぐったい。けれど、体中ぞくぞくする、この感覚は嫌いじゃない。意識しないと離してしまいそうで、彼の服を握る指先に力を込めた。

「私だって、君だけを愛してる」

全くもう、どうしてこうもキザな台詞を平然と言えるのだろうか。告げられた僕の方が恥ずかしくなって、思わず彼の肩に顔を埋めた。手袋をした指が僕の髪を撫でる。心地良さに目を閉じた。が、彼の手はすぐに離れていって、それは自分の膝に添えられた。何事かと思ったら、彼は一言呟いて、うずくまった。

「い、たい……」

その声があまりにも情けなくて、吹き出してしまった。そういえば、机にぶつけていたような。タイミングが良いのか悪いのか、いずれにせよ、僕が笑う度に赤面する彼はかわいかった。

「……仕方ないなあ」

足が痛いらしい彼の代わりに、今日は僕が彼を押し倒してみた。積極的じゃないか、と楽しそうに微笑むミナキくんはかっこよかったけど、やっぱりかわいいと思った。



211202
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