(マチマツ)
※スペではない
※若干注意



日本人ははっきりものを言わない。求めている答えはものすごく単純な、イエスかノー。なのに聞いてもいない理由を長々と喋って、遠回しに結論を述べる。しかもそれが本心でなかったりするのだから、何を考えているのかわからない。特に彼に関してはそれが顕著に現れる。彼、というより、彼の住んでいる地域ではそうらしい。しかし、だからこそ、何でもひらりとかわされる、つかみきれないところに惹かれて、つい追いかけてしまうのかもしれない。あと、日本人は敏感だと思う。なにせ、キスひとつで全速力で走った後のように息があがって、顔は耳まで火照り、体に力が入らないのか、膝は折れ、立っていることすらままならないのだ。そんな時腰でも撫でようものなら、あっさり声をあげる始末だ。嫌だ、と熱に濡れた目で言われても、信用するのは難しい。また日本人特有の、"建前"というやつではないだろうか。現に今、抵抗もされない。両手は大人しく俺の肩だ。今にも崩れ落ちそうな細い体を抱いて、二度目のキス。彼の口の中は、漏れる吐息と同じくらい熱い。くぐもった声が鼓膜を震わす。心地良い。背中からニットに手を入れて撫で上げると、腕の中の体が固まって、彼の手が俺の腕を掴んだが、ただ置かれたに等しかった。俺はそのまま手を移動させ、心臓の位置に触れる。鼓動が指先に伝わる。激しく脈打つそれは力強くも、彼の薄い体は弱々しい。守りたい、と思った。顔が見たくなって、唇を解放してやると、必死に呼吸を始めた。落ち着くまで待つことにした。視線はぼんやりとして定まっていないようだ。瞳に溜まった水は今にも溢れそうで、拭ってやろうかと指を伸ばした。しかし、彼は俺から逃げるように顔を背け、瞼を伏せたと同時、大粒の涙がこぼれ落ちた。それからは止まることなく、次々に流れ出す。本格的に泣き出してしまった彼をどうしていいのか、俺にはわからなかった。

「っ、いたい、よ……」

小さな声に、慌てて腕を解いた。その瞬間、俺は随分と強い力で彼を抱いていたことに、初めて気付いたのだ。



211201
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