(ハヤマツ)



おれは頑張った。男同士だとか、身長差だとか、その他諸々悩みに悩んだが、想いを伝える決意をして、所々いや相当噛みながら、なんとか全部マツバにぶちまけた。おれは頑張った。
マツバの第一声は、顔真っ赤だよ、だった。くすくす笑われて、ますます恥ずかしくなって、一瞬で顔が熱くなった。でもおれはマツバから目を反らさなかった。真剣だからだ。
しかしマツバは困っているようだった。同性に告白されるなんてそうあるものじゃないから当たり前だ。でもおれは強引にでも、多少でも彼の気を引くつもりでここに来た。嫌われるかもしれない、覚悟は出来ている。
「おれは、本気なんだ」
胡座をかいていた体は簡単に畳に倒れた。驚いた顔にはおれの影。緊張した指先が畳を引っ掻いた。その音にマツバがちらりと顔の横に置かれたおれの手を見た。
「マツバ」
おれの声は自分でもびっくりするほど穏やかで、低くて、掠れていて、とても情けなく、恥ずかしく思った。でも組み敷いたマツバの頬には一瞬で赤が差した。今ので緊張してくれたんだろうか。嬉しい。
「ぼくは……ぼくには、どうしたらいいのか、……わからない」
マツバは悩んでいる。どうしたら今までのままでいられるのか。どうしたらおれを傷付けないか。こいつはそういう人間だ。
「じゃあ、」
でもおれは優しい人間じゃない。押し付けて、悩ませて、急かして。勝手だ。
「嫌だったら、抵抗してくれ」
ざり、と音を立てて、畳が爪に食い込む。マツバは今度は反応しなかった。代わりに、おれを泣きそうな目で見上げていた。それは、近付いて、近付いて、鼻先が触れた瞬間、静かに閉じられた。マツバの両手は、畳に投げ出されたまま、最後まで上げられることはなかった。



211125
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -