(ヒビマツ家庭教師パロ)



火曜の夜は変に緊張する。自分の部屋なのになんでリラックス出来ないのだろうと考えて、そこに他人の存在があるからだという結論に至った。ではなぜ他人の存在が緊張をもたらすのか、更に考えているうちに、疑問が浮かんだ。他人ならば誰でもこのような緊張を覚えるのだろうか、その人物が、他の人物、例えば幼なじみの彼女であるとか、だったら緊張するのだろうか。実験の結果、人の部屋で転がりながら漫画を読みあさる姿に緊張することは全くなかった。古くからの友人である彼女だけではデータとしては不十分なので、もう一人の友人を部屋に呼んだ。学校で隣の席になって、俺が話し掛けても素っ気ない態度だったくせに、数学の点数が一点差で俺に負けたとかで、勝手にムキになって、それ以来やたら絡んでくる、不思議な奴。遊んだこともなければ、そいつが誰かと遊んでいるのも見たことがない。適当な用件で誘って、部屋に入れてみた結果、俺は確かに緊張を覚えた。つまり、無遠慮な幼なじみが例外だっただけで、俺は他人が部屋にいると緊張する人間なのだ、と、最初は納得した。しかし、次の火曜の夜だ。いつも通りの時間に尋ねてきた彼を部屋に通して、雑談を交わした。その間も緊張は解れることなく俺を苦しめた。そこで、あの赤毛の友人が来た時は、緊張こそしていたが、それは奴が何も喋らずに固まっていて、俺も特に話題もなく、ひたすらに沈黙の状態だった時間だけだったことを思い出して、俺の出した答えが間違っていることに気付いた。ちなみにその緊張は、奴の携帯が無機質な着信音を鳴らした瞬間から、なんか着信設定しろよどうのこうので会話が始まり、解けた。つまり、奴の場合は、ただの気まずさからくる緊張だったのだ。では、彼とは火曜の夜に毎週会っているため、今更気まずさを覚えているわけでもない、加えて、会話をしているにもかかわらず、俺が緊張しっぱなしなのはなぜか。悩み悩んで悩み抜いて、ひとつの仮説にたどり着いた。彼だからこそ俺は緊張する、つまり俺は、彼に対して何か他の人間に対してとは違う認識を持っている。それを確かめるために、その次の火曜の夜、ひたすらに自分の感情を分析した。そして、最も明確で、こんな考察なんて必要なかった、ただ単純な答えを出したのだ。




「……で、その答えが?」

「はい、俺はどうやら、アンタに恋をしてしまったようです」

そしてまた容赦なくやってきた火曜の夜。俺は緊張していた。



211110




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