今日も今日とて眠い眼を擦りながら山を登り校舎を目指す。
まあ私にとったらこんなの山とは言わないが。ククルーマウンテンと比べたら山と呼ぶのも烏滸がましい。むしろ丘?…今の台詞何か格好いいな。

いつもの様にスマホで笑顔動画のランキングをチェックしながら歩いていれば、あっという間にぼろぼろの校舎が目の前に現れた。
下駄箱で靴をかえて廊下を歩くけど誰もいない。みんな朝礼に遅れないように早い時間に来てんのかな。ハッ…!実は私以外のみんなで1時間前に打ち合わせとかしてたらどうしよう…!早くもいじめか…!
教室の扉にかける手も震えちゃうぜよ…。なんて脳内ぼっちごっこを繰り広げながら教室の後ろの扉を開けるとみんな一斉にびくっと肩を震わせて私が入ってきた扉を見た。寺坂の顔まじうける。

「おはよ」
私だと分かった瞬間みんなは安心したように息を吐き口々に挨拶を返してくれた。昨日も一昨日も同じ時間に入ってきたんだから私だって分かってもいいはずなのに…。まあまだ緊張状態なんだよね。あの先生に慣れてないからこその可愛い反応だ。

幸運にも獲得できた一番後ろの寺坂の隣の席に座り、後ろを向いたままの綺羅々に向かって挨拶。もちろんイヤホンは外して。

「おはよ」
「…あんたまた今日も徹夜したでしょ」
「え、なんで分かったの」
愛か。女の子のならエブリデイばっちこいだよ!

「目」
ですよねー知ってた。徹夜した上に泣き腫らしたからいつもよりすごいのかな。でも朝確認した時にはあんまり気にならなかった気がしたけどな。…愛か。

「うわ本当だ。鈴木今日は特にやっば」
「それでも可愛い私」
「………そうね」
「き、綺羅々が…綺羅々がデレた…!」
「いやもう呆れて適当に返事しただけじゃねーか」
「あ゛?」
「まあまあ、落ち着けよ。それより鈴木、またゲームか?」
「良いこと聞いたな!村松!昨日は久しぶりに"ぼくの地球を守って"読んでたら止まらなくなって…やばすぎだよねあれ。何回私の涙腺を攻撃したら気が済むんだよ…!木蓮と紫苑の擦れ違い具合とか…もうね、もうね…!ちなみに私が一番好きなのは木蓮パパ。あーいう儚くてでもがちで性格良い人ってこの世にいんの?でもママも好き。もっと言えばモードも」
「それより今朝もまたすんのかよ、あれ」
「そ、それより…だと…!」
「あんなん意味あんのかよ」
「ていうか胡桃いつもやってないでしょ。後ろから銃声全く聞こえないし」
「まじか鈴木やべえ」
「やべえ」
「まじやべえ」
「何だこのやべえ攻撃。お前らの知能がまじやべえ」

なんていつもの様に馬鹿達とぐだっていればみんなの空気がどんどん研ぎ澄まされていくのを感じる。時計を確認すればもうすぐ朝礼の時間だ。
さて、今日は久しぶりにパズとドラのゲームでもするかな。


2015/07/10

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