「いい?通知が来てるから分かってると思うけど、あんたは今年、あのエンドのE組で去年と同じように過ごすのよ。これだけは何がなんでも絶対よ」

彼女はいつもの高圧的な態度で命令してきた。そして私の足元目掛けて可愛らしい、いかにも中学生が好んで使いそうな封筒を投げる。
しゃがんで封筒を拾い、中を確認した後、私はもちろん頷く。メリットがあるうちは従うつもりだ。
彼女は私の反応を見た後、それでいいのよ、と嘲りながら部屋を出ていった。

扉の閉じる音を聞きながら、私のせいで彼女があんな性格になってしまったのかと思うと、彼女はなんて可哀想なんだと少しだけ思う。共感はできないが、彼女の思考も理解している。
でも、彼女は中学2年間、私を思いのままにしてきて勘違いをしているのだ。
もう差は埋められた、むしろ追い抜いているのだと。それがあの、いつからか私にだけ向けられるようになった高圧的な態度に現れている。
それでも私はそれに憤りを感じたり、指摘したりはしない。
ただメリットがあるうちだけは、従うのだ。

…いや、少し違うかもしれない。彼女以外に、彼女以上の恩恵を与えてくれる人は存在する。
それでもわざわざ彼女の恩恵を選んでいるのは、"私"という雄大な年月に挑もうとしていた彼女を、愛しい、と感じていたからだろう。幼い頃の彼女に敬意を表して。私は終わりが見えているこの茶番劇に今日も付き合う。

この世界が、私の学年が、暗殺教室になると知っていながら。


2015/07/03

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