この空と海と大自然の美しさのわからんやつは生きる値打ちなどない!!

この世界に生まれて、海を見るたびに、ふとブラックジャック先生の言葉を思い出すことがあった。それほどこの世界の海は、自然は、美しかった。
そんな美しい海の上に、今いるのだ。頭上には空から零れてきそうなほどの満天の星。ぼんやりと小舟に寝そべって眺めていたいと思うほど綺麗だ。

でも私は、この美しい自然を満喫することもなくただただ前を向いてオールを力一杯漕ぎ続けている。癒しは私の膝の上のいつの間にか乗っていた、この小舟に乗る直前まで抱き上げていた猫の寝顔を眺めることだけである。
疲れて喉はカラカラだけど水はできるだけ飲みたくないし、ご飯なんてもっと食べたくない。
本当になぜ、あの時ちゃんと私の頭は正常に働かなかったのか…。



そう、お兄さんがまさかの鷹の目だった、という驚きの事実に脳が一時停止していたが、あの変態神父の声が思っていたよりも近くから聞こえ、慌てて掴んでいた手を離し、小舟にあったオールを漕いだ。それはもう力一杯。
ひと漕ぎで島が豆粒大の大きさにしか見えなくなったが、用心に用心を重ねて夕日が完全に沈み、暗闇が辺りを支配するまで無心で漕ぎ続けた。

「大分進んだな」
こんなに可愛い幼女が一生懸命オールで小舟を漕いでいるというのに一切手助けはせずむしろ楽しそうにしていたお兄さん、いやミホークは私が漕ぐのをやめるとそんな言葉をかけ、水を手渡してきた。
一応円をして周囲の安全を確認した後、手渡された水を飲む。大分喉が渇いていたのか一気に全て飲んでしまった。
…そうして私は飲んだ後に気づいてしまったのだ…。

ここは小舟。次の島までどれだけかかるか分からない。

そう…トイレどうしよう……と。

風呂に入れないのも屋根の下で寝れないのも覚悟の上。というか全然平気。
でもトイレ問題は…それにこんなイケメンのお兄さんの前でとか…なにそれどんな罰ゲーム…。
ミホークはこんな可愛い幼女()の用を足してるとことか見ても何にも思わないかもしれない、むしろ幼い子供の用を足してるところを見て興奮して変なことしてくる人じゃないって信じてる…!そんなの俺らの鷹の目じゃねえ…!
あ、でも次の島まで近いなら大は我慢できるんじゃね?さすがに大を見られたらしぬ…

「…次の島まであとどれくらい?」

「2週間かそこらだ」

絶望した。

おわた。はい、おわた。

アレルヤじゃなくても世界の悪意が見えるよこれ。

前の世界とは違って尿意とかのコントロールの訓練はしてないから、2週間は流石に我慢できる気がしな



いや、待て。
解決策があるわ。
オールを漕ぎ続ければいいんだこれ!私の力なら漕ぎ続ければ1週間、いや3日で次の島まで着いちゃうんじゃない?
あ、かいけつゾロリやな。



そうして冒頭に戻る。

今でも何故か私を見続けているミホークに方角やらを聞き力一杯漕ぎ続ける。
こんなに可愛い幼女が頑張ってるのに何故手伝わない。
鬼畜か。
それともあれか?幼女は愛でるべきみたいな系統のお方なの?それは…安全…な、のか…?いやでもそんなの俺らの鷹の目じゃねえ…!

色々なことをぐるぐる考えつつ、私の頭は【最終手段は厳しい誓約をかけてトイレをつくることだ…!】という結論に達した。


2015/07/03
タイトルは、思考回路はショート寸前でもよかったかも。
果たして次回、彼女はトイレを作るのか…!それともオールを漕ぎ続けて精神が落ち着き、どこでもドアという素晴らしい発想に辿り着けるのか…!まさかの奇跡が起きて1日で辿り着いてしまうのか…!?
乞うご期待。

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