あの後父さんに頼み込んでもう一度系統を調べたけど、皿と血の色が黒くなるだけで最初の時のように爆発したり、悪魔の実が出たりはしなかった。でも、何をしても特に悪魔の実の力は使えなかった。なんだったんだ…?


「クルミ」
ぼうっとしながら部屋までの道を歩いていたら、目の前に見慣れた右手が差し出された。
そう言えば、私としたことがいつものように手をつないでなかった。

慌てて左手でイルの手を握る。動揺しすぎていつもの私じゃありえない事してたわ。いっかい落ち着こう。ひっひっふー。
…うん、そりゃ確かにあの悪魔の実は何だったのか謎だけど、後々分かるでしょ。折角の自由時間なんだし早く部屋に帰ってご飯食べてゴロゴロしよう。
意気込んで歩き出したはいいけど数歩歩いて立ち止まることになってしまった。
振り返ると、小首を傾げて先ほどの所で佇んだままのイル。

「イル?」
「なんでこんなに熱いの?」
「…?」

今日って気温高いっけ…?あ、私の手か。
そういえば、手が冷たい人って心が温かいとかいうよね。あれ大体あってるって聞いたときはびっくりしたなあ。なんでも女性ホルモン、男性ホルモンが関係してるとか。まあ詳しくは知らないけど。
だから逆に手が熱い人って心が冷たいって事だ、よね…?え…つまり、今私は、イルに遠まわしに悪口言われたって事…!?なにそれつらい。
と、茶番は措いといて、私今熱いの?

「まさか…クルミ様失礼いたします」
そう断って私の前にしゃがみ、額に手をあてようとするハサム。

…あ!あ〜あれか、私、風邪だと思われてるのか。…嫌だなぁ。もし風邪だったら、母さんに「ウィルスごときに負けるだなんてっ」とか怒られて懲罰房に閉じ込められそう。余計悪化するよね。
でも熱っぽいとかダルいとかないけどなあ。…あ、あんまり痛みと感じなくなったんだから、風邪の症状なんて尚更自分では分かんないのか?

てか私まだハサムのこと許してないんだけど…!あの時のお前の顔がたまに夢に出てくるくらいだし…!!まじ触るな。熱チェックならゴトーさん一択で。
なんて口を聞くのも嫌で代わりに嫌悪感たっぷりの目で睨んでやった。

そんな私の眼光に一瞬怯んだハサムだが、もう一度断りをいれて手袋を右手だけとり、私の額にその手をあてた。

その瞬間、ボッと私の額からハサムを拒絶するかのように炎が吹き出た。


え…


驚いた顔で見てくるイル、尋常じゃないくらい持っているビデオが震えているゴトー、何が起こったのか分からず自分の手と私のおでこを交互に見ては頭上にハテナマークを浮かべるハサム。
そんな3人を順に見たあと、空いている右手でピストルの形を作りながらさっきの感覚を思い出す。すると作ったピストルの先が不安定にメラメラしだした。

…なるほど理解した。


どうやら私はメラメラ人間になってしまったようだ。


2015/05/14

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