「父さん、クルミは具現化系なの?」

目の前の赤に近いオレンジ色の悪魔の実。
もうこうなったらデスノートは諦めて、能力者になるしかないのは分かっている。

「いや、黒に変化していたから特質系だ。…色以外の変化はあまり聞かないが」

ただ、オレンジって…あの…主人公の食べた悪魔の実もオレンジだった気が…。
…ゴムゴムかあ。まあ、戦闘で全く役に立たないわけじゃないからいっか。でも暗殺に役に立つのはスパスパの実とかドクドクの実だよね。もっと言えば自然系がいいです。
いや、落ち着いてクルミ。オレンジ=ゴムゴムの実って決まったわけじゃないぜ!悪魔の実って原形が分かってるの少ないからその分希望はある…はず。

「ふーん…でもこの実、今まで見たことないな。クルミは知ってる?」
「ええっと、これは……………ってぇぇい!!?」

見たことがないから気になるのか、実を持って観察しているイルに質問されて一瞬言葉が詰まる。…おっふ、ここで『漫画の能力なの☆』とかイルはまだしも父さんには言えない…!2人の反応次第では恥ずか死ぬ自信がある…!
そしてよくよく考えたら、具現化系じゃなくて本当に良かったと思えた。今回みたいに勝手に出てきたんじゃなくて、自分で漫画の能力を再現したのを知られたら恥ずかしさ更に大きかったわ。デスノート作ろうとしてた過去の私は封印しよう。若かったんだ…。

とりあえず、イルも父さんも一生漫画なんか読まないだろうから適当にごまかそうとイルの方を向いた時、この世界に生まれて初めて私は奇声を発した。

イルが…悪魔の実を、齧りかけてる…!?

脳が目の前の事象を確認する前に、訓練時など比べ物にならないくらいの速さで体が動き、イルから悪魔の実をふんだくって1口齧った。

あっぶねぇ…!これ一番に食べた人がその実の能力者になるんだよね?もし気付かなかったら、イルが何かの実の能力者になってたんだよね?
…ギタラクルさんが誕生しないルートに入るところだったぜ…!
『僕のだぞッッッ!!!』って叫んだ変態の気持ちが分かるような気が…しない、な。うん。流石にあんな変態の気持ちは分かんないわ。

ってんん?私、今、何を咀嚼してるん…!?
急いで手に持っている悪魔の実に視線を落とすと、1口齧った跡が。

…………え、普通。
あれっ?悪魔の実ってすごく不味いんじゃなかったっけ?毒の耐性が発揮されてるの?
…ま、まあ不味いと感じなかったのは良い事だよね!
それより能力だよ!

とりあえず、ほっぺを引っ張ってみる……伸びない。
心の中で念じてみる……特に変化なし。
飛ぶ、しゃがむ、手を上下する、深呼吸、身体中を触る、など軽く色々してみるが全く変化はない。

えっと、あの……
悪魔の実って、どうやったら発動するんですか…?


2015/01/26

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