・ハロウィン
・番外編
・キルア9歳くらい、迷子主とイルミが21歳くらい




「とりっくおあとりーと」
「え…?」

振り向けばそこには血だらけの弟が居ました。え…。

「…何してるの?」
「なんだよ、姉貴知らねーの?今日は皆から怖がられる格好してこの呪文を唱えるだけでお菓子がたっくさん貰える日なんだぜ!豚君に教えてもらったんだ!」
「それ微妙に違う」
確かにお化けとかの仮装=怖がられるって発想は間違ってないけど、全身真っ赤になるほどの血だらけって何か違う。
教えるならちゃんと教えろよ豚。…ってバカバカ!弟の事を豚だなんて…!『はい!先生!』『発言を許可しよう』『心の中での発言であって、口に出してないのでセーフだと思います!』『なるほどな。私も同意見だ。行ってよし!』2:0でセーフだな。良いこと言うな生徒(テニス部モブ)。

「で、姉貴はくれねーの?」
お菓子なんか持ち歩いてるわけないじゃん。お菓子が欲しいなら執事に頼めばいいじゃなーい。
てかそもそも
「その呪文はゾルディック家では通用しないよ」

「なん…だ、と…!?」

キルはここが漫画のコマなら背後に雷が落ちてるくらい驚いている。なんでそんな衝撃受けたし。さっきも言ったけど、お菓子が欲しいなら(以下略)
だって、そもそもゾルディック家にはイベントを楽しもう!みたいな精神皆無じゃん。
母さんとか絶対知らないよ。知っててもキルから受けるイタズラ(拷問)を全裸待機しそう。

あまりの衝撃に固まってしまったキルにどうしたらいいのやら、と困っていると誰かが近づく気配。執事だったらお菓子持って来させよう。

「何してるの?」

「あ、イル」
「あ、兄貴…」

キルが来た方からイルもやって来た。多分下見てるから血の後を辿って来たんだろうな。
イルが来たせいで今度は違う意味で固まってしまったキル。面倒くせぇ…!

「あ、そうだ。イルにもさっきの呪文言ってみたら。」
「えっ?!」

イルは絶対知らないと思う。
じゃあ、何故こんな事をするかって…?キルに現実を見させてあげるんだよ。優しいな私。
渋る(怯える?)キルを押してイルの正面に立たせる。あ、血が付いた。何となく舐めてみたら何と本物の血の味。え、誰の血だよ。

「あの、兄貴…。えっと、その……」
「何」
「あ、あのな……」
「うん」
告白か。

「と、とりっくおあとりーと!」
「………………」
「………………」
「………………」

ほらやっぱり。
子供の夢を奪うのは心苦しいけど、ここはゾルディック家だからね。
キル、お前はよくやった。男には、負けるとわかってても戦わなきゃならない時があるんだ。ってどこかのヒットマンが言ってた。
それに、バスケ漫画のある監督が「『負けたことがある』というのが、いつか大きな財産になる」とも言ってたよ。
だから涙目で私に助けを求めて来ても面倒だか…ごほん。負けを認めて、大きくなれ。




「はい」
キルに向かって伸びた右手にはお菓子の詰め合わせ袋。
て、ちょいちょいちょい!!イル用意してたの?!てかハロウィン知ってたの?!

「え、あ、兄貴…?えっ?」
え、まじで?キルも驚いてるけど、私も多分表情に出るくらい驚いてるよ…!
驚くキルをじっと見つめたイルは次に何故か私を見つめてきた。しかも微妙にドヤ顔。…って、ハッ!ま、まさか、お菓子好きなキルがハロウィンを知ったら渡せるように毎年用意してたんじゃ…!?
どんだけキルが好きなんだよ…!!

まさかのイルの行動に何も言えなくなったキルと私を置いて颯爽とイルは去っていった。ドヤ顔で。
え、何この気持ち。





1時間後。やっと状況把握して現実に戻ってきたキルが、ゾルディック家にも呪文が通じる事を知り嬉しくなり、次に会った母さんにそのテンションのまま突撃して泣かされるのはまた別のお話。

そして次の年のハロウィンにキル用にお菓子を用意して何故か張り合う双子だが、キルのトラウマにより最終的には鬼ごっこに発展してしまうのは更に別のお話。

2014/10/11
(早いけど)ハッピーハロウィン!

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