まあ、私の出生を話した、ということは記憶違いかもしれない。
あんまり気にしないでおこう、マツバが忘れているだけなのかもしれないし。
その日はそこでバイバイして、別れた。マツバはヤミラミをボールにしまって、フワライドを出して空を飛んでいった。
それより、一応高速船は暇な時期。もう少しで忙しくなる。今はこの時間を楽しんでおこう。
あの日からちょっと経って、ひさびさに丸一日お休みをもらった。しかも二日連休。もうちょっとで忙しくなるから、今のうちゆっくり休んでおいてね、と言われた。お言葉に甘えて、ゆっくり休むことにする。
今日は朝から家を出ないで、家事をやって、ポケモンの毛づくろいやらをして、お茶飲んで本を読んでいた。
ポケモン達もリラックスできたのか、お昼寝を始めている。皆ボールから出しておいてあるから好き勝手に寝てる。
仰向けで寝ているブルンゲルを下敷きにして、マリルリがのびのびと寝ている。前々から思っていたけど、マリルリはブルンゲルがお気に入りなのかなあ。よくああやってくっ付いている時がある。それから、トドクラーも伸びて寝ている。可愛い。ペリッパーも翼をたたんで寝ている。あのキラーンっていう目を閉じて、ちょっと口を開けている。パルシェンも貝を閉じて顔(でいいのかなあ)を隠して寝ている。これは本気で寝ようとしている時の寝方だ。
唯一起きているルナトーンは浮遊しながら目を閉じている。瞑想しているのかなあ。
穏やかな時間。思わず、綻んでしまう。
けど、もうそろそろ夕方。ご飯の用意をしなくちゃ。…と、食材が何もなかった。あー。買いに行かなきゃかあ。
瞑想しているルナトーンに悪いけど、話しかける。
「ルナトーン、ちょっとごめんね。私ちょっとお買い物してくるね。皆のこと、お願い」
パチ、と目を開けて、ほおお、と返事をしてくれた。
ルナトーンになら安心して任せられる。
薄い朱色のグラデーションが美しい空。ここの空は、昔から変わらないように思える。ちょっとしんみりする。
空を見ながら、歩く。
近くに美味しいお惣菜やさんがあるから、そこでご飯を買おう。あと、皆にちょっとおやつを買っとこう。たまのお休み、ちょっと贅沢にしてもいいよね。
ああ、そうだ。ついでにエンジュジムを覗こうと思っていたんだ。ここに戻ってきてから一度も近づいたことがなかった。だからこそマツバがジムリーダーと知らなかったなあ。まずはそっちに行こう。
着いたけど、まず看板が目に入った。千里眼を持つ修験者…って。
千里眼、せんりがん…聞いたことのあるような…なんだっけなあ。まあ、いいや。とにかく、ジムを覗いてみよう。
…暗い。ぽつぽつと明かりが灯っているけど…。怖い。調べたけど、マツバはゴーストタイプ使いなんだっけ。納得の内装。あ、遠いけど、マツバが見える。あの金髪はマツバだ。ちょうど挑戦者が来ているみたい。ゴーストを出している。ジム用のポケモンなのかな。ジムリーダーは挑戦者のレベルに合わせて出さなきゃいけないんだよねえ、たしか。
挑戦者は若い男の子。最近旅に出たのかな。
…マツバ、楽しそう。表情はちゃんと見れないけど、生き生きしている気がする。
バトル、かあ。旅していた頃は日常茶飯事だったけど、今はまったくしていないなあ。
うずうずしてきた。
なんて考えていたら、ジムトレーナーの人に挑戦者ですか?と話しかけられてしまった。
違います、すいません!と言って逃げるようにジムを離れた。ちらっと後を見たら、トレーナーさん首を傾げていた。申し訳ないことしちゃったなあ。
お惣菜と皆にちょっとおやつを買って、家に帰った。
皆起きていて、マリルリがお腹すいた、と買ってきた物が入っている袋を引っ張った。
しょうがないなあ。この子は一番食い意地が張っている。でも、こんな時間だし、ご飯にしようか。
用意して、皆にあげる。いつもの水ポケモン用フーズ。ルナトーンには岩ポケモン用を。それに、さっき買ってきたポケモン用のおやつ。皆喜んで食べてくれている。特にマリルリ。
それを見ながら私もご飯。頂きます。
「…ねえ、皆」
食後、それぞれがくつろいでいるところに話しかける。
皆こっちを見てくれた。
「バトル、してみない?」
幼い頃から旅をして、今現在。ずっと一緒にいてくれている、マリルリとパルシェンは直ぐに頷いてくれた。
ルナトーンとブルンゲルはちょっと考えてくれてから、返事をしてくれた。
ペリッパーとトドクラーは困った様子だった。この子たちは好戦的、とは程遠い性格だから、仕方ないかなあ。
「無理に、とは言わないよ、ペリッパーとトドクラー」
頭を撫でる。ぐー、とトドクラーは鳴いて、ペリッパーもくあ、と鳴いた。気にしてくれている様子だった。大丈夫だよ、と言えば、二匹とも頷いてくれた。
「今日、エンジュのジムを見てきたの。丁度バトルしてて、久々にやりたいな、と思ったの。やってもいい、と言ってくれるなら、協力してくれないかな」
残りの四匹は、再度頷いてくれた。
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