カーテンから漏れ出す光はお昼頃を告げている。
うーん。眠い。もう少し寝てもいいかな。だって、お休みだしさ。
 と、思っていたけど。



「ヴッ」



 何かがばっふと私の上にのってきた。まあ、大体こういうことするやつはあいつしかいない。



「マリルリ…重いよ…」



「リルッ!」



 重くない!とでも言いたいのか。私の上で飛んだり跳ねたりし始めた。辛い、辛いから!!



「ごめん、ごめんマリルリ!!!」



「ルリ」



 よし、とでも言いたいのかな。
 彼女の許しを頂いた私はすっかり目が覚めてしまった。ふう、と枕に突っ伏す。よじよじと私の上から降りてきたマリルリは布団からはみ出る私の手を引っ張る。どうしたのかな、お腹すいたのかな。ご飯あげたんだけどなあ。



「ん、はいはい行きますよー」






 リビングに行けばルナトーンが横たわっていた。どうしたのかなあ…



「マリルリ、ルナトーンどうしたの」



 布団の私の抜け殻で遊んでいたマリルリは長い耳をピン、と伸ばしてこちらに走ってきた。
 彼女はルナトーンに近寄って体をごんごん叩き出した。ちょっと、割れないかな?大丈夫?かわらわり覚えてるんだけどなあ…使ってないよね?
 何回か叩いたら、ルナトーンは浮き上がった。体に外傷は見た限りないみたい。よかった。マリルリは役目を終えたと言わんばかりに寝室に戻っていった。もしかして布団で遊びたいから私を起こしたのかなあ…。



「ルナトーン、どうしたの」



 ほおお、と高く鳴いて私に擦り寄ってきた。久しぶり。甘えてくるなんて。よしよし、とマリルリにごんごんやられた所を撫でてやる。
 ルナトーンがこんな風に甘えてくるとき、どうすればいいか私は知っている。



「お昼だけど、でかける?」








 ルナトーンはやっぱり、晴れた夜が好き。月の光を浴びたいのかな。ちゃんとしたことは分からないけど、そんな気がする。でも、基本的に外が好き。



「最近外歩いてなかったよね、ごめんね」



 ルナトーンから反応はなかったけど、早く行こうよと急かすように先に行く。嬉しそう。最近仕事が忙しくて皆にかまってあげられなかったからなあ。ごめんね。
 ルナトーン、先に行き過ぎちゃ駄目だよ、と声を投げかける。返事はなかったけど、あの子は言えば分かってくれるから心配はない。

 さて、私も行くかと歩き出そうとすると、ポポポン、とモンスターボールから皆が飛び出してきた。パルシェン、マリルリ、ブルンゲル、トドクラー、ペリッパー。様々なところから人が集まる高速船乗り場に勤めている私は、あらゆる地方のポケモンを交換する機会が多かった。パルシェンとマリルリ以外は交換して出会ったポケモンだ。かわいくて仕方ない。

 いつもは空を飛んでアサギシティまで行くんだけど、運動不足で鈍った体をほぐそうと思うから、歩いてアサギまで行って、皆を自由に泳がせようかなあ。



「シュスじゃないか」



 お、この声。



「マツバ!本当にエンジュに住んでたんだね」



「嘘ついても意味ないけどなあ」



 また、とろんと笑う。気が抜けてしまう。



「マツバ、どこか行くの?」



「うん、アサギシティに行こうかなと思っていたんだ」



「あ、偶然。私も行こうと思ってたの。徒歩で、だけどね」



「一緒に行っていいかい?なんだかシュスと行ければ楽しそうだ」



 そう言われたら悪い気はしないなあ。



「うん、もちろん」








 アサギシティまで徒歩でそんなにかからないけど、ゆっくり話せるくらいの時間はある。
 話題は、私が手持ち皆を出していたから、手持ちのこと。



「この子がね、ブルンゲル。イッシュっていうとこから来た子。で、この子がペリッパー。あと、ちょっと先を行ってるのが、ルナトーン。それと、トドクラー。皆ホウエンから来たの」



「ふうん。なるほど。仕事の関係で様々なポケモンを持っているの?」



「うん。交換する機会が多くてね。あ、あとこのブルンゲルは水とゴーストタイプで珍しいんだよ」



「へえ!ちょっと欲しいなあ」



「たまごならいいよ!けど、マツバのポケモンも見たいな!」



「僕のかい?今日はあまりついてきてもらってないんだけど」



 そういって、マツバはボールを三つ、投げた。
 ポポポン、と出てきたのはフワライドとゲンガーとヤミラミ。皆暗いとこが好きなゴーストタイプだからか明るいところに出てきて驚いているみたい。



「ゴーストタイプ好きなんだねえ。ヤミラミ初めて見た。小さいね」



「そうだね。けど、頼りになるんだ」



 ヤミラミを撫でて微笑んだ。きっと、様々な出来事を一緒に乗り越えてきたんだろう。私もそうだから、分かるなあ。





 マツバはアサギに着いたらじゃあここで、と去っていってしまった。仕事でもあったのかな。
 またね、と手を振ると、ちょっとだけ微笑んで首を傾げ、手を振りかえしてくれた。

 灯台の近くで見つけた、穴場のスポット。打ち寄せてくる波があまり強くないし、周りがあけていて遠くまで見える。皆がどこで泳いでいるかがわかりやすい。



「皆、あんまり遠く行っちゃ駄目だよ!」



 水、氷タイプの子達は嬉々として海に入っていった。ペリッパーは海上を羽ばたきだした。ルナトーンは私の隣に居て、潮風を感じている。ルナトーンは私の手持ちで唯一水、氷タイプでない。逆に水に弱いけど、周りが水ポケばかりだからか海に行く機会が多くて、海に慣れてしまったよう。今では好きになってしまったのかな、そう思える。

 皆、それぞれに生き生きしていて楽しそう。仕事が忙しくても、ちゃんと皆をここに連れてこよう。



 そういえば、マツバの仕事ってなにかなあ。後で聞いてみよう。










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