あの後、ちょっと落ち着いてから、家に帰った。
 家に着いたら、皆思いのままに過ごしていた。私に気がついたマリルリは、寄ってきてくれて、片足で地団駄を踏んだ。
 ちょっと、怒っている。どうしてかなあ、と時計を見れば、なるほど、一時間半は経っている。心配してくれているんだ。

 ごめんね、と頭を撫でる。ルリ!と強く返事された。もうこんなことするんじゃない!と言っていると思う。
 はい、すみません、と頭を下げれば、よし、と言うかのようにルリリ!とこれまた強い返事が返ってきた。満足したのか、ばたばたと寝室に行ってしまった。うーん、また布団で遊ぶのかなあ。

 皆に謝らなきゃなあ、と思って、それぞれの元に行く。ごめんね、遅くてごめんね、と皆に謝っていく。ルナトーンには任しちゃったのに、遅く帰ってごめんね、と謝った。気にするな、というようにほおお、と穏やかな鳴き声で返事をくれた。



 色々片付けて、皆をモンスターボールに入れて、寝る準備して、さあ寝ようと布団に入って。髪の毛を流そうと思って動かした手が目に入ってしまった。

 ああ、この手とマツバの手が繋がっていたんだなあ、なんて思ってしまって、何だか顔に熱が集まっている気がする。
 明日から仕事なのに。早く寝なきゃ。そう思うほど、色々思い出しちゃって…。はあ、と溜息が出てしまう。

 マツバの考えていることが分からない。何を思って、こんなことするのかなあ。
 マツバは、寂しいのかなあ。だから、ああやってスキンシップを図るのかな…なんて。ちょっと無理矢理だけど、そういうことだろう、うん。



 …カスミちゃんに、もう会いたくなってしまった。カスミちゃんに会えば、元気をもらえる。今の私は、ちょっと考え込んじゃって、ダメだ。



 とりあえず、目を瞑っていれば疲れはとれる、と聞いたことがあるから、瞑っておこう。

 真っ暗な視界の中、マツバと別れてから流した涙のことが過ぎった。なんで、涙が溢れたのかなあ…いやいや、あんまり考えすぎちゃダメ、きっと、幼い頃の思い出が蘇って寂しくなったんだよ、きっと…。



 なんて自問自答してたら、いつの間にか眠れていた。









 あの日から数週間は経ってしまった。仕事の忙しさに、皆の調整に追われたりして、気がついたらそんなに経っていた。
 仕事はひと段落。また暇な時期がやって来た。

 もうそろそろ皆の調子もいいし、バトルできるコンディションも整ってきたし、マツバに挑戦しようかなあ、なんて考えつつ仕事していたら、お昼には今日の分も終わって、お客さんも居ないので、上がりになった。

 お疲れ様です、お先失礼しまーす、と桟橋を渡っていくと、ヤミラミに、金に紫が目に入る。…マツバだ。思わず、視線を足元に向けて、立ち止まる。
 あの日以来、初めて会う。どういう顔したらいいのかなあ…なんて、少しためらってしまう。けど、結論付けたじゃないか、私。ただちょっと寂しかっただけで、私自身あんなにどきどきしたり泣いてしまったりしたのは、懐かしかったり寂しかったりしただけだって。
 …うん。よし。

 いつも通りでいいんだ、と前をみれば、あれ。ヤミラミが居ない…。
 マツバはこちらを見ていたと思えば、モンスターボールを取りだして、フワライドを出した。

 …ん?
 そのまま見てれば、マツバはフワライドに乗って、空を飛んでいってしまった。



 …どういうこと、なのかなあ…。
 私のこと、気付いていたよね…。なのに、行っちゃった…。

 …………。

 うん、きっと、急ぎの用があったんだよ、うん。
 ジムリーダーだし。色々やらなきゃならないことがあるんだよ。



 …でも、なんだろうこのもやもや感…。私、凹んでる。気分が良くない。

 どうして。
 はあ、と溜息が出る。

 モンスターボールを投げて、ペリッパーを出す。出てきたペリッパーはくああ、と一声鳴いて私を見る。驚いている。
 あまりにも酷い顔していたのかなあ、私。



「あ、ペリッパー、ごめん、大丈夫。家まで、飛んでくれる?」


「…くあー」



 ペリッパーはまだ驚いているみたいだけど、空を飛ぶ姿勢をとってくれた。いつも通り、背中に乗って、よろしく、と声を掛ければ、上昇して飛び始めてくれた。

 決めた。
 今日はいっぱい寝よう。忙しい時期は、あんまりきちんと寝れなかったときもあったし、体力回復だ。うん、それがいい。
 それにしても空を飛ぶのは本当に気持ちがいいな。風の合間を縫って、たまに風の塊を正面から受けたりして。身体が冷え、冴えてくるのを感じる。

 なんて考えていたら、家に着いた。





 皆にはちょっと寝るね、といっておいた。お腹がすいたり何かあったら起こしてね、ともいっておいた。
 それぞれ返事を返してくれた。
 なんだか今は、それが有難かった。

 寝やすい格好をして、布団に潜る。
 あー、これならすぐ寝れそうだなあ、なんて考えていたら、やっぱり夢の世界にすぐ行けた。





 夢を見ている。
 輝きの無い真珠を、手でごしごし洗っている夢…。ごしごし洗っては真珠を見る。つやがない。また洗って…の繰り返し。泡は、流しても消えないから、手で泡を除けて見ていた。
 夢って不思議で、その行為の理由が分からなくても違和感が無い。なぜか、馴染んでいる。
 夢の中の私は、何も考えず黙々と洗い続けていた。



「…ん」



 目が覚めた…変な夢。
 …頭がぼーっとする。時計を見れば、一時間ちょっとしか経っていない。まだ寝るには余裕がある。どうしようかなあ。

 …夢を思い返す。夢って記憶の整理とも、何かの暗示ともいわれているんだよね…。
 …何故か、次の休みにマツバに挑戦しようと思った。さっき見た夢は、そう言っているように思えた。



 よし、挑戦することを決めたし、もうちょっと寝ておこう。



 今度は夢は見なかったけど、マリルリと何故かブルンゲルがお腹すいた、とタックルをしてきて、びっくりして起きてしまった。
 きっとマリルリが唆したんだろうなあ…なんて考えつつ、私はご飯の用意を始めた。













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