!ピュアなふりしたクダリとツンデレな夢主。








 もう、なんなの。なんでこんなやつに振り回されなきゃいけない訳。



「あ、また来てくれたんだね!ありがとー!」



 にこにこにこ。いっつも楽しそうに笑顔を貼り付けてるこいつはなんなの。はあ。



「いいからさっさと始めましょ」



「えー!ぼくツバキとまだ話していたいな!」



 にこにこにこ。ああ!もう!



「私この後用事があるの。だからとっとと済ましたいの!わかった?」



「うー…わかった」



 珍しく笑顔が消えてへの字口になってる。お兄さんにそっくり。



「じゃ、すっごい勝負、始める!」



 お互いのモンスターボールをフィールドに投げた。








「あー楽しかった!」



 にこにこにこ。なんでこいつに毎度負けるの…。完璧にシミュレートしてポケモンのコンディションも完璧に整えてきたのに…。皆、ごめんなさい。私のポケモン達は毎回期待に答えてくれているのに。悔しい。



「…ありがとうございました」



 くそ。今なら泣ける。けど、何も考えず感情を剥き出しにするほど子供ではない。取り繕ってお礼はきちんと。



「こちらこそありがとうございました!ねえ、今回のブニャットの技構成良かったね!ぼくびっくりしちゃった」



 にこにこにこ。その割には動揺なんて微塵も感じられなかった訳ですけど。



「…そうかな。とんぼ返りをいれただけだけど」



「うん!うまく活きてたね!ほかの技もブニャットの素早さを活かしていたし!君、すごいよ!」



 にこにこにこ。もう、こいつはいつもこうだ。このペースに巻き込まれないようにしないと。
 なんて思っていたら頭に違和感。ん?撫でられてる?!



「えっ!な、何してるのよ!」



「えっ?撫でてる!」



 いい子いい子!
 にこにこにこ。なによ。そっぽ向いてやる。



「子ども扱いしないで」



「…ツバキ、本当にそう思ってる?」



「…?」



 頭を撫でていた手が下りてきて私の頬を触った。みるみる顔に熱が集まる。
 なにしてんのこいつ!!



「ど、どこ触ってるの!」



 目線だけクダリに向けて言う。
 私の言葉を無視してぐい、とクダリの方に顔を向かせられた。近い!二十センチくらいしか距離がない!って、いうかいつもの笑顔じゃない、口を閉じて、少しだけ口角が上がっていて、なんだか真面目な顔してる!なんなのやめて!!



「近い!離れてクダリ!」



 ぎゅ、と目を瞑る。両手を前に出して、ガードする。そうしたら、ふ、と息をはく気配。



「やっと名前を言ってくれたね!」



 ちゅっ。
 頬に違和感。キス、された?



「…!!!」



 頬からも手が離れる。離れるついでに髪を梳かれた。目を開く。いつも通りの笑顔。距離はそんな近くない。けど、少し頬が赤い気がする。
 て、いうか。何してくれたのこいつ!



「ふふ、ダメだよツバキ。キスしてくれっていってるのかと思ってキスしちゃった!ほっぺだけど!」



 にこにこにこ。
 …馬鹿じゃないのこいつ!!



「…っ!!クダリの馬鹿!!」





 クダリの胸を思いっきり渾身の力で突き飛ばして、ちょうど良く駅に到着して停車してくれたトレインから降りる。猛ダッシュで。



 …全車両にカメラついてたよね…。もうバトルサブウェイには行かない…。





「もう、かわいいなあ。あれ無自覚でやられたらキスしちゃうよねえ。ほっぺで我慢したけど、次されたら口にしちゃうよ…ねえ?」



 私に聞こえるようにそう呟いていたクダリなんて、知らない!!







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