!病み気味なノボリさんとそれに翻弄される夢主。
!papa/razziモチーフ。
「い、痛いです!ノボリさん!!」
ツバキ様の右手首を掴んで、壁に押し付ける。それと同時にツバキ様に擦り寄る。距離は零に近い。壁と私に挟まれて、もう貴女様はこれで逃げられませんね。
それにしても、痛いとは。少々手加減致しましたが…。ツバキ様の体に傷つけるなど、許されがたいこと。少しだけ、力を緩めてさし上げました。
「申し訳ございません、これで痛くはありませんか」
「あ、はい……痛くないですけど、離してはくれないんですね…」
「ええ、それは了承致しかねます」
ああ、身長の差もありますが、ツバキ様は私を睨み付けているつもりでしょうが、上目遣いにしか見えません。逆効果ですよ。本当に貴女様は一挙手一投足私を煽る。
「ノボリさん、わたし何かしましたか」
「そうですね…したといえば、した、ということになりますね」
「……謝りますから、離れてくれませんか」
「致しかねます。ただ、私の質問に答えて頂けたら離れることも考えますが」
「ノボリさんが期待される返事が出来るとは限りませんが…」
上出来です。答えはどう足掻いても”はい”の一択ですから。
私は元来表情が硬い。しかし、抑えることの出来ない感情が私の無表情を歪ませ、口角が上がるのを感じます。
ツバキ様の体のラインに沿って、空いている手を這わせる。
途端、睨み付けていた目が見開き、頬に朱が差しました。思わず息を呑みました。美しい。
早く、早く貴女様を……私の。
「!…っ、なにするんですか!」
「ツバキ様、私のものになってくださいませんか」
「……はあ!?いきなり何言い出すんですか!ていうか体撫で回すのやめてください!!」
ツバキ様は身をくねらせ私から逃れようとしてらっしゃいますが、効果はまったくありません。
「それで、答えを頂けますか」
「い、イヤです!わたしはものじゃありま、ん!」
言葉にするより、こうして行動したほうが伝わるでしょう。ツバキ様の唇に、唇を押し当てました。
ずっと、こうしたかった。念願叶った今、私は喜びに満ち溢れております。ああ、柔らかい。体に這わせていた手をツバキ様の後頭部に沿え、支えます。
やっと何をされているのかが分かったのか、ツバキ様は体を跳ねさせ首を振り逃れようとしましたが、そうはさせません。
では、遠慮なく。
「……ぁ、ふ、う…ん、 んっ!」
一度唇を離し、また押し当てて舌を入れ込みました。
油断したのか簡単に進入でき、ツバキ様のものを絡め取る。角度を変え、何度も舌を絡める。たまに上顎や歯列も舐めあげる。どうやって呼吸をしていいのか分からなかったのでしょう、ツバキ様の左手が私の腕を握り、もう止めて、と静止をかけました。
もう一度離してツバキ様を見やれば、頬を染め呼吸を乱し涙を浮かべ唇を濡らし、こちらを困惑した顔で見ておりました。
もっと、乱れた姿が見たい…。
私の加虐心を煽るには十分な姿でした。
「ツバキ様…私、貴女様の初めてを頂けて、大変嬉しく思います」
「……なんで、初めてだって……知って、いるんで、すか」
「貴女様のことならだいたいのことは把握しております」
「……へ…?」
後頭部を支えていた手をツバキ様の顎にもってきて、少し上げる。
訳が分からない、と言う顔でこちらを見上げております。
「私、貴女様のことを、心の底から愛しております。寝ても覚めても頭の中は貴女様のこと一色です。なので、少しでも貴女様のことを知りたくて、家族構成、仕事、好みや恋愛経験の有無…様々なことを調べさせて頂きました」
びく、とツバキ様の体が震えた。瞳が動揺で揺れている。
「ツバキ様、私のものになってくださいませんか。なってくださいましたら、とびきり優しくして、甘く愛して差し上げましょう。ならないというなら」
手をそのままに、ツバキ様の耳元に顔を寄せる。ツバキ様は目をぎゅ、と瞑りました。そんな、無防備な姿を簡単に見せないでくださいまし。
「貴女様が私のものになるまで、ずっと、追いかけ回して差し上げます」
ツバキ様の耳たぶを軽く食み、離れて、両手を放してあげました。
放したと同時にずるずるとツバキ様は床に座り込んでしまわれました。
「さあ、答えを」
ツバキ様の美しい瞳から真珠のような涙が一粒、零れ落ちました。
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