権謀術数 1
英太がストーカー被害にあってるらしい。
なんともいえない、疲れたような表情で教えてくれた。
毎日、自分を写した写真がポストに直接投函されてくるらしい。
相談を受け、不安だという英太を毎日家まで迎えに行っていたのだが、ストーカーは英太を付け回しているようだ。
英太はひどく怯え、俺が離れるのを酷く嫌がった。
俺以外には言えねぇよ、と英太は力なく笑う。
目の下にくまを作ったその姿は酷く痛々しかった。
いつも通りに英太を家まで送っていった時。
別れの挨拶をする俺の袖を英太が掴んだ。
強ばった表情。
ぐい、とそのまま袖を引っ張り、俺の耳元に近付き、囁いた。
「あいつかもしれない。最近、いつもいるんだ。」
そう言って小さく通行人を指さした。
俺は英太を家に押し込んだ。
「俺が話をつけてやる」
って言って。
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