ジローがクズ。ちょっと単語がエロいかも。




 何故か知らないけど、新人のなまえちゃんって子はすごく俺に懐いてて、何か分からない事や相談したい事があるとしょっちゅう俺の机にやってくる。教えてやると頬を染めながらニコッと笑うもんだから、俺も釣られて笑う。同期や先輩に、彼女居るくせに若い子に手出して、なんてからかわれる事もあったけど別に悪い気はしなかった。
 俺達の関係が変化し始めたのは、12月の金曜日に会社全体で行われたクリスマスパーティーからだった。俺、その日はめっちゃ早起きしたからもうビール片手にうつらうつらしてて、見兼ねた同期が帰る様促してくれたんだ。だから俺、最後の力を振り絞ってエレベーターに乗ってビルを後にして、ちょうど通りかかったタクシーに雪崩れる様に乗り込んだ。ドアが閉まる直前、俺を呼ぶ声がした。

「芥川さーん!!!」

 虚ろな目で外を見ると、なまえちゃんが走っていた。手に俺の鞄を持って。嗚呼、鞄届けてくれたんだーて分かったからすぐにタクシーから降りてなまえちゃんの元に駆け寄った。なまえちゃんはお酒が苦手なのか首元まで真っ赤にしてちょっとうるんだ眼をしてた。鞄を受け取ってタクシーに乗ろうとしたら、私も良いですか?なんて言われて、まあ断る理由も無いし一緒に乗り込んだ。お互い行き先を言うとなまえちゃんの家の方が近いから先にそっちからって事になってタクシーは動き出した。

「なまえちゃん、帰っちゃって良かったの?」
「はいー。私もう飲めそうになくて」
「そっかー。お酒弱いんだね。可愛い」
「か、可愛くないですよー。もー芥川さんったら。それは彼女さんに言ってあげてください」

 話してみるとまだ意識ははっきりしてるし、全然飲めちゃうんじゃない?なんて思ったけどそうでもなかった。次第に静かになっていったなまえちゃんはいつの間にか眠り込んじゃって、アパートに着いてもなかなか目を覚まさなかった。運転士さんの視線も痛いし、仕方なく俺がなまえちゃんを抱えて部屋まで運ぶ事にした。タクシーを降りるとなまえちゃんもさすがに意識が戻ってきたみたいで、寝ぼけた目で寒い寒いって仕切に言ってた。一人で歩かせるには頼りない足取りだったから肩を抱いて一緒にエレベーターに乗る。その時まで気付かなかったけど、小さい空間で密着してるからかなまえちゃんの良い匂いが鼻を擽って、俺はもう眠気なんて吹っ飛んでた。まあ、お察しの通り、部屋に着いても寒い寒い言うなまえちゃんを抱き締めてたらそんな雰囲気になって、気付いたらベッドの上で二人とも生まれたままの姿で寝てた。あちゃー、なんて思いながら頭を掻いてるとなまえちゃんも起きて事情を察したらしく、ちょっと顔を赤らめて布団からはみ出てた肩を隠した。

「なまえちゃん、ごめんね」
「い、いえっ」

 なんかお互いドギマギして会話が続かなくて、俺はさっさと手際良く脱ぎ捨てた服を拾って帰ろうと思った。ぐちゃぐちゃに丸めたワイシャツを手に取って、行方不明の片方の靴下を探していると、なまえちゃんが声を掛けてきた。

「あ、芥川さん、良かったら朝ご飯食べませんか?」
「へ?」

 拍子抜けもいいとこななまえちゃんの発言に俺は豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔してふ抜けた声を出した。そしたら、それが面白かったみたいでなまえちゃんがいつもみたいに笑って、俺もいつもみたいに釣られて笑った。なまえちゃんの笑顔見たら、俺また元気になっちゃって怒られたら止めようって思ってキスをしてみた。そしたら最初は息止めて驚いてたんだけど、すんなり受け入れてくれて、首に手を回してくれたから、そのままもう一回ベッドに潜り込んだ。なまえちゃんのお肌ってスベスベしててすごく気持ちよくて、おっぱいも彼女よりは小さいけど弾力があって良い感じ。何より反応が可愛くてたまんない。耳元で優しく囁くと肩をビクッと揺らしたり身を捩ったりして、おっぱいを舌で転がしながら舐めると甲高い嬌声を上げて反応してくれる。その声を聞くと俺は甘あい感覚が体中にせり上がってくるのを感じるんだ。嗚呼、気持ち良い。なまえちゃんをぎゅっと抱きしめるとまた良い匂いがして俺はそれをめいっぱい吸い込んだ。

 俺達は、まるでご飯を食べるみたいなごくありふれた事をするみたいに身体を重ねるようになっていた。平凡な日々にちょっと色が差して、俺はかなり楽しかった。それはなまえちゃんも一緒だと思う。だって俺と居る時はいつも笑ってて、エッチの時だって、気持ち良さそうにしてたから。
 だから、今なんでなまえちゃんが涙をいっぱい溜めてこっちを睨んでるのか分かんない。彼女とまだ付き合ってたんですか、って、結婚ってどういう事ですか、って捲し立てて怒るなまえちゃんがいつものなまえちゃんじゃなくて、怖いとさえ思った。

「別れたなんて言ったっけ?」

 そう答えたら、なまえちゃんはまた目をきつくして俺を睨んだ。けどぽろっと涙を零すもんだから慌てて近寄ろうとすると、俺の頬が渇いた音を立てた。

「もう話しかけないでください」

 ぷりぷり怒って去っていくなまえちゃん。俺は叩かれたほっぺがじんじんするのを感じながらその後ろ姿を見ていた。

 俺、彼女居るって最初の頃言ったよね?
 それを知ってて、エッチしたんじゃなかったの?
 なのに何で怒ってるの?
 嫌だったなら何で嫌って言わないの?
 
 俺の頭の中は、いっぱいの疑問で埋め尽くされた。
 
(150805)

なんで?

back to top