「ねえ、私達ってさ」
「あー?」

 休みの日に約束した訳でも無いけれど、いつの間にか私の部屋に来てベッドを占領しながらゲームをする。

「何で出会ったんだろうね」
「は?あーあ、死んじゃっただろぃ。お前が変な事言うからだぞ」
「えー、それはブン太が下手だからでしょ」

 吹っ飛んで画面からフェードアウトされるキャラクターが戻ってくる前にと、ブン太は急いで起きあがったかと思えば机の上のポテトチップスをこれでもかと口に詰めた。袋から手を出した拍子に零れ落ちる欠片を気にも留めずコントローラーを握り、力いっぱいボタンを押す。

「さっきの話しだけどさ」
「あ?あー、何でってそりゃお前と俺がたまたま同じクラスだっただけじゃん」
「......」
「なんだよ、その不服そうな顔。森で歌ってた時に偶然出会った相手が婚約者だった。みたいなのが良い訳?夢見過ぎだろぃ」

 ゲームする前に見た映画の内容をそのままいうブン太。呆れているような声色で、なんだかそれが憎たらしくてコテンパンに連続技を仕掛けてやった。勝負の結果画面に移る前にだああああと力無く声を出してコントローラーを投げ捨てた彼はベッドに身体を預け、大の字になった。

「私はさ、たまたまだだったなんて思ってないよ」
「.....まだ続くの?」
「だって、そんな偶然とか、たまたまとかさ、もしかしたら付き合って無かったかもしれない言い方じゃん」
「まあ、そうだなあ。E組の舞ちゃんさえ振り向いてくれたら」

 私が渾身の力で振り落としたクッションはボスッと鈍い音を立ててブン太の腹に当たり、そのまま腕に収まった。

「私達が出会ったのは必然で、たまたまとか偶然なんて言葉で表現しちゃダメなんだよ」
「.......んで?」
「んで?じゃないわよ。これって運命なんだよ、分かる?」
「へー」

 情の一切籠っていない相槌に軽く小突いてやろうと手を出すと手首を掴まれる。ブン太の手は身長のわりに大きくて、普段は思わないけど、嗚呼、やっぱり男なんだなと気付かされる。ぐいっと身体を引き寄せられて顔が近づく。

「んじゃあ、ここは必然的にキスしようぜ」

 何をどう結び付けたのかさっぱり分からないけど、ブン太は、お腹の上に置いていたクッションを移動させ、ニッと悪戯に笑う。その笑顔に影がうっすらとかかり、更に抱き寄せられた。私が目を閉じるか否かに、柔らかな感触が私の唇に届く。次第に私の頭はとろとろの幸せで潤い、十分に満たされた。




 たまたま、とか、偶然なんていう不確かな言葉じゃなくて
 貴方と同じ星に生まれた事が必然で、
 貴方と出逢う事が必然で、
 貴方と恋に落ちる事が必然であって、それ以外はあり得ない。
 貴方との関係が絶対的に必然なものであってほしい。ただ、それだけなのだ。

(2015.07.04)

ひとつだけ願うこと

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