始めに認識したのは痛みで、そこから全てが広がっていった。思うように動かない体が気持ち悪い。多少の身じろぎが、全身に激痛を生む。
 四肢を投げ出し、湿った泥に体温を奪われながら、当たり前の様に青々とした空を仰いでいた。

 何があったのか思い出せない。自分は誰だったろう。なぜこんなにも辛いのだろう。
 何かを探していた気がした。
 何かを守っていた気がした。
 それが何であったかすら、もう思い出せないけれど。ただ大空が突き抜けるように青いのだ。

 体が痛い。
 胸が痛い。
 木々の輪郭が、雲の切れ目が、動物たちの鳴き声が、霞んでゆく。空と混ざる光の粒子に、下手くそな笑みが浮ぶ。
 それでもあのとき、誰かの姿を垣間見た気がしたのだ。






('120112)開幕

幕間のシュプレヒコール
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