09


「決闘者王国(デュエリスト・キングダム)?」

1日ぶりの学校で、私は遊戯くんからそんな聞きなれない単語を耳にした。
クラスの違う私が遊戯くん達と話が出来るのは朝とお昼と放課後ぐらいで、今はその中でも朝の時間。どうやら私が体調不良で学校を休んでいた間に何かが起こっていたらしく、遊戯くん達の表情はいつもより少し陰っていた。

「うん、今度開かれるデュエルモンスターズの大会なんだ。その大会に『招待』を受けたんだけど……」
「大会かあ。なんだか大規模そうな名前だね」
「インダストリアル・イリュージョン社の主催だから、相当大規模だぜ」 本田くんが遊戯くんの後ろから私に言う。
「えっ!I2社が主催なの!?あの、ペガサス・J・クロフォードが社長の……」

何気なく話を聞いていたがとんでもない名前が出てきて驚いた。
インダストリアル・イリュージョン社、通称I2社。デュエルモンスターズの創始者であるペガサス・J・クロフォードが代表取締役社長という、世界規模の大企業だ。
そんな私達には雲の上のそのさらに上にあるような存在が主催である大会なのだから、きっと世界中から実力のある決闘者達が集うのだろう。その中でも主催側から招待される決闘者なんて尚更だ。それらにも驚いたが、何よりその内の一人として遊戯くんが選ばれている事に一番驚いている。

「すごいなあ……」 思わず感嘆。奇跡すら感じる。
「でも、問題なのはそこじゃないのよ」
「え?」

杏子の逆説で我に返った。

「そうなんだ。実は……」

話し手が再び遊戯くんに戻る。彼は皆の中でも一番曇った天気だ。
そんな遊戯くんの話は次の通りだった。
遊戯くんの家に差出人不明の荷物が届いた。中身はタイトルのないビデオテープと、少し変わったデザインの赤いグローブ。遊戯くんがそのテープを再生したところ、真っ先に映ったのは先程の話に出たI2社代表取締役社長のペガサス・J・クロフォードだった。遊戯くんがそれに面食らっていると、突然画面の中のペガサスが遊戯くんに決闘を挑んできた。ペガサスは録画したものであるというのに遊戯くんの出すカードを全て言い当て、そしてまるでそこにいるかのように決闘を行った。ペガサスとの勝負に僅差で敗れてしまった遊戯くんに、ペガサスは『罰ゲーム』と称して、

「お爺さんの魂を、ビデオテープの中に……」

閉じ込めてしまった、と。そんな事が起こっていたらしい。
どうにもこうにも信じがたい話だが、遊戯くん達がこんなに悩んでいるのだ。空想だったらここまで影響を受けないだろう。

「そうなんだ。それで、じーちゃんを取り戻すには、決闘者王国に参加してペガサスに勝つしかないって」
「ああ、そういう『招待』ってこと……」

それは招待というより、半ば強制的に参加させていると言ってもいいだろう。何にせよ、汚いやり方である事は間違いない。海馬くんの時といい、大企業の社長さんってみんな頭のネジ1つ吹っ飛んでるのかな。規模もやたら大きいし……いや、これ以上はやめておこう。

「それで、行くんだよね。その大会」
「もちろん。じーちゃんを助けなきゃ!」

遊戯くんの大きな瞳の裏で、怒りと決意の入り混じった炎が小さな木々を焼き払っている。
彼は強い。絶対に、大切なものを取り返して帰ってくるだろう。血みどろになっても。
私に出来ることは彼を見守って応援することだ。それしか出来ないけど、それだけでも彼の支えにはなるはず。

「遊戯くんは絶対お爺さんを助けて戻ってくる。だから、心配はしないよ」
「!」
「応援してる!」
「……うん、ありがとう!侑さん!」

そう言って、遊戯くんはにっこりと笑う。


押されたその判子によって確証を得た証明書を、そっと胸に仕舞った。





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3ヶ月かけてこんなにみじかい!(しろめ)
長らく更新せずすみませんでした。待っている人がいるかも定かではありませんが。

そして更新しない間に1000hit超えてる!わあああありがとうございます!
次から決闘者王国編に入っていく予定です。
相変わらず拙すぎる文章ではありますが宜しくお願いします。




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