Short novel | ナノ


requited love  




 夕餉の後は給仕番に食器や杯を頼むとスランドゥイルを自室に送り届けて終わるのが常だが、こうして共に食事を摂った日アレゼルは夜伽の相手をする事になっていた。湯浴みで体を清めてから部屋に行くと、濃い紫色の外衣を羽織ったスランドゥイルが杯を片手に待っていた。
 
「来たか」
「またお酒飲んでたのね・・・・・・」
「せっかくだからアレゼルも飲むといい。これは特に味が良いからな」

 一杯だけ飲むと、確かに良い味をしていた。それを読み取ったのかスランドゥイルはもう一杯注いでくる。勧められるがまま飲んでいるといつの間にか頬が熱くなり始め、アレゼルは杯をテーブルに置いてもう十分と意思を示した。そもそも酒を飲みに来たのではないし、王と違って特別酒に強いわけではない。明日からの任務に支障でも出たら大変だ。

「いつか酒に酔ったアレゼルを見てみたいものだ」
「冗談。何を口走るかわからないわ」
「酔っている間は本音を言うと申すしな」

 スランドゥイルがアレゼルの手を取り、寝所へ入るとすぐさま噛み付くような口づけをされる。腰に回された手で脇の留紐を解かれ、大きな手が夜着の中に入り弄る。そしてそのまま寝台に倒れ込むと、二人は闇の中で交わった。










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 夜明け前。目を覚ましたアレゼルは未だだるさが残る体でそっと寝台から出ると、湯殿で体を清めた。今日も仕事だというのに、腰が痛くて仕方がない。

「(・・・・・・この関係はいつまで続くのかしら)」

 近習としてスランドゥイルの側に仕えて早数百年。夜伽の相手をしろと言われるようになったのは、近習になって間もない頃だった。恋人を作ったことなどないアレゼルにとってスランドゥイルは初体験の相手だった。彼もそれを知ってか、初めての日に随分優しく抱いてくれたのを覚えている。
 だが所詮アレゼルは近習に過ぎず、スランドゥイルの隣に寄り添うような存在にはなれない。ドリアスにいた頃はできたじゃれ合いも、二人で出かけて冒険することも、王とその近習という関係では到底無理な話だ。
 今できるのは、彼を守り夜伽の相手として生きていくことだけ。できれば想いを全部ぶち撒けてしまいたい。彼に愛されているという自覚はある。だがもしそれが勘違いだったら?そうでなくともスランドゥイルが自分を妃にすると言ったら、彼が臣下にどんな目で見られるだろう。
 結局、望んだ形で彼の隣に立つことなどできはしない。だからさっさと何処かの令嬢でも連れてきて婚儀を挙げてほしい。

「っ・・・・・・」

 頬を流れた雫を振り払い、アレゼルは湯殿を出て身支度を整えると自室に戻った。


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