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カラズラス

 カラズラスの峠はホビット達にとってきつい道のりだった。積もった雪も人間やエルフに比べて格段に深く感じ、一歩一歩を進むにも大変なのだ。

「はぁ、はぁ、」
「大丈夫かフロド」
「なんとか・・・・・・、・・・っあ!!」

 足を踏み出そうとしてバランスを崩し、フロドが勢いよく下に転がっていく。一番後ろを歩いていたアラゴルンが受け止めると、立ち上がったフロドは首元に今まで下げていた指輪を通した鎖が無いことに気がついた。
 前を見ると、雪の上で鎖と指輪が光っている。そしてそれを拾い上げたのは・・・・・・

「ボロミア」

 指に鎖を引っ掛け、ボロミアは指輪をじっと見つめていた。その場に緊張が走る。

「奇妙だな・・・・・・、この小さなものが我々に猜疑心や恐怖を植え付けるなんて。こんな小さなものが・・・・・・」
「ボロミア!!指輪をフロドに返せ」
「・・・・・・返すよ」

 アラゴルンがそう言うと、ボロミアは一瞬ハッとした表情になりゆっくりフロドに近づいていく。フロドはすぐにそれを掴み取り、ボロミアは「そんな指輪なんか」と言いながらフロドの頭をわしゃわしゃと撫でて再び前を向いた。

「・・・・・・」

 警戒を解かないアラゴルン。その右手は彼の剣の柄に置かれていた。






+ + + + + + +








 轟々と舞う吹雪。山の天気は変わりやすいというが、これは自然のせいではないという程勢いが強く、その証拠に魔法使いが呪文を唱える声が風の音に混じって聞こえてくる。

「"Cuiva nwalca Carnirasse; nai yarvaxea rasselya!"(目覚めるのだ残酷なるカラズラスよ!!その角を血で染めんことを!!)」
「君の悪い声が聞こえる・・・・・・」
「サルマンじゃ!!」

 恐らくクリバインの何匹かに行き先を読まれ、それをサルマンへ報告されたに違いない。力強い声が辺りに響き、上から崩れた岩が落ちてくる。全員急いでそれを避けるとアラゴルンは声を張り上げて言う。

「ガンダルフ!!奴は山を崩す気だ!!山を降りよう!!」
「ならん!!!!」

 山に静まるよう呼びかけサルマンに対抗するガンダルフ。しかし吹雪はますます強くなるばかりで一向に収まらない。その間、人間や他の種族に比べて寒暖に強いエルフ2人はホビットを抱えるボロミアとアラゴルンの前に立ち、少しでも風に当たらないよう守った。
 どれほど時間が経ったのだろう。ガンダルフは必死に山を静めようと呪文を口にするが、サルマンの声はより大きく強くなっていっている。頭上で稲妻が走り、山の角に直撃したかと思うと再び岩が割れ、大きな雪崩が全員の上に襲い掛かった。

「っ、ぷは!!!!」
「みんな無事か!?」

 各々雪の中からはい出てくる。どうやら誰も雪の下敷きにはならなかったようだ。だが次にさっきのような雪崩が起きれば、確実にここで全員凍死するはめになる。

「山を降りよう!!ローハンの谷を抜けてゴンドールへ!!」
「ローハンの谷はアイゼンガルドに近すぎる!!」
「山を超えられないなら地下を行くしかないぜ。モリアの坑道を抜けていこう!!」

 ギムリの二度目の提案にガンダルフは表情を暗くさせた。あそこにはとてつもなく恐ろしい生き物が潜んでいる。上手く行けば気付かれずに通過できるかもしれないが、通らないに越したことは無い。だがこれ以上山にいるのも危険だ。

「・・・・・・指輪所持者に決めさせよう」
「ここに留まるなんて無茶だ!!ホビットたちが凍え死んでしまう!!」
「フロド?」
「坑道を抜けましょう」
「・・・・・・決まりじゃな」

 こうして、一行は来た道を引き返しドワーフの地下都市へ向かった。


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